21バク ページ21
そして六度目の夜。
カラ松は早めに就寝し、いつものように夢世界へと足を踏み入れるといつもの場所にアオがおらず彼はアオを探しはじめた。
花畑の間を歩いてしばらく。
遠くの方でなにやら話し声が聞こえてくる。
その声に誘われるように、カラ松は声がする方へと足を進めた。
「あ、アオだ」
少し先にアオの姿が見え、カラ松は声をかけようとするがアオがいるその場にアオ以外の誰かがいるのが見えた為、カラ松は口を閉じた。
そんなに距離が離れていない為、彼の耳にあちらの会話が聞こえてくる。
「なぁ、あとお前だけだぜ。契約者のノルマ達成できてないの」
「……あぁ、分かってる」
「分かってるならもっと頑張れよ。お前ただでさえ"落ちこぼれ"なんだからさ」
「そうそう。獏の癖に悪夢より吉夢が好きなんて、獏の名が泣くぜ」
ケラケラと嘲り笑う周りの奴らに、アオは何も言わずただただ黙ったままだ。
そんなアオに興味を失ったのか、周りにいた奴らが次々と姿を消していく。
「……チッ。好き勝手言いやがる」
そう吐き捨てるアオから確かな苛立ちの色が見てとれる。
カラ松がそんな様子のアオにどう声をかけたらいいか迷っていると、彼の存在に気付いたのかアオがカラ松のいる方へ視線を向けた。
「カラ松。来ているのか?」
「……あぁ」
そう言われ、出ざるを得なくなったカラ松はアオに駆け寄った。
カラ松がこの場にいたという事は先ほどのやり取りを聞かれていたという事だ。
その事を悟ったアオは気まずそうな表情をしながら、口を開いた。
「見苦しい所を見せてしまったな」
「……アイツらは?」
「あぁ、あいつ等は他の夢世界の管理人みたいな獏たちだ。この夢世界は様々な獏の手によって世界中に存在しているからな……っておい!?」
そう説明するアオの目に、ボロボロと涙を流すカラ松の顔がうつる。
カラ松の表情から怒りや悲しみや悔しさが読み取れ、アオは彼の心情を察した。
「まったく……何故お前が泣くのだ」
「だ、だってっ……アオが、あんなやづらに、言われっぱなじなのが……」
「分かってる。我の代わりに泣いてくれているのであろう……本当、優しすぎるなお前は」
グズグズと泣き続けるカラ松の目元を出現させたハンカチで拭うが、ハンカチが涙を吸って湿っていくだけで泣き止もうとしない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
長月シキカ(プロフ) - 永久さん» はじめまして、作者の長月シキカです。コメントありがとうございます！ 物語の最後の終わり方は中々に難産でしたので、永久様にそう言っていただけて本当に嬉しいです^ - ^ こちらこそ、最後まで閲覧してくださってありがとうございました♪ (7月28日 23時) (
レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
永久(プロフ) - はじめまして！ 永久です！今回この作品を読まして頂きました。とてもストーリーが出来ていて夢主さんのキャラもすっごく良かったです！最後の終わり方もとても心打たれるものでした！最高の作品を作ってくれてありがとうございます！ (7月28日 21時) (レス) @page49 id: 41fe1dd09b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：長月シキカ | 作成日時：2018年6月25日 23時
