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20バク ページ20

そう考えるとこの男はどこまで不憫なのだろうか。
アオはそう心の中で思ったが、それを口にすることはなかった。


「それより……夢、見るのだろう」

「あぁそうだった! 最っ高にクールでエキサイティングなドリームをプリーズっ!」

「なんか一つ増えているが……まぁいいか。さぁ目を閉じ強く念じていろ……ゆくぞ」


アオがそう言うとカラ松は言う通り固く目を閉じた。
それを見ながらアオは持っていた煙管をくわえて、息を吸い体の中に煙を貯める。
そしてその煙を煙管を外した口からカラ松に向かってふぅと吹き放った。


アオの口から放たれた白い煙はまるで意思を持っているかのようにカラ松の周りを包み込み始める。
カラ松の姿が少しずつ白煙で見えなくなっていき、煙がはれる頃にはそこに彼の姿はなくなっていた。


彼の姿が無い事にさほど驚いた様子を見せないアオは、ふよふよと新たに漂い始めた一つのシャボン玉を手元に寄せる。


そのシャボン玉の中には、カラ松が自分の望んだ夢が映し出されていた。


「……良い夢を」


カラ松の夢のシャボン玉にそう声をかけ、アオはそのシャボン玉を飛ばした。

****

それからカラ松が悪夢を見る事はなくなった。


あるときは、映画で見るような男らしいマフィアの夢を。
またあるときは、あるカジノの支配人となりかっこよく仕事をこなす夢を。
またまたあるときは、とある国の王子となり美しい姫とダンスをしたりする夢を。
そして、あの五人と普通の仲の良い兄弟のように楽しく過ごす夢を。


かわるがわるに自分が見たい夢を見て、カラ松の心は幸せで満たされていく。
しかし、夢の中で幸せに満ちあふれても起きて現実世界に戻り兄弟たちと顔を合わせると、彼らの自分に対する態度の夢との違いに幸せな気持ちがしぼんでいくのだった。


おそ松からは、自分の財布からギャンブルに使うと金を抜かれ。

チョロ松からは、些細なことでグチグチと文句を言われ。

一松からは、相変わらずの暴言と暴力を振るわれ。

十四松からは、怪我をしているにもかかわらず野球に誘われ。

トド松からは、リハビリがてら買い物に荷物持ちでついて来てと言われ。


実のところ、兄弟たちは最近そっけないカラ松に構って欲しいが為の言動だったのだが、そんなことをつゆと知らないカラ松の心はどんどん乾いていく。
その心の渇きを癒そうと、カラ松はさらに夢世界へアオのもとへ通い続けるのだった。

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長月シキカ(プロフ) - 永久さん» はじめまして、作者の長月シキカです。コメントありがとうございます! 物語の最後の終わり方は中々に難産でしたので、永久様にそう言っていただけて本当に嬉しいです^ - ^ こちらこそ、最後まで閲覧してくださってありがとうございました♪ (7月28日 23時) (レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
永久(プロフ) - はじめまして! 永久です!今回この作品を読まして頂きました。とてもストーリーが出来ていて夢主さんのキャラもすっごく良かったです!最後の終わり方もとても心打たれるものでした!最高の作品を作ってくれてありがとうございます! (7月28日 21時) (レス) @page49 id: 41fe1dd09b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:長月シキカ | 作成日時:2018年6月25日 23時

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