14バク ページ14
カラ松が嬉しそうな顔をするのとは逆に、獏の顔は真剣になる。
獏はテーブルにステッキを軽く当て音を出すと、ポンッという音と共に一枚の紙と羽ペンを出現させカラ松の前に差し出した。
カラ松は自分の前に滑るように飛んできた紙とペンを掴み、それに目を向ける。
その紙にはびっしりと文字が羅列されていた。
「これは……?」
「今渡した紙には、先ほど言った契約の内容が書かれている。よく読み、理解し、承諾したのなら、下の空欄に名を記入せよ。勿論、嫌ならその契約書を破るのも一つの手だ……ってオイオイオイっ!!」
ふとカラ松の方を見ると、既に羽ペンを手にし契約書にサインしようとしていた。
それを見て、獏がステッキを使うのも忘れくらいに急いでカラ松から羽ペンを取り上げると、突然の事にカラ松は目をパチクリさせ、獏と契約書を交互に見る。
「な、何で止めるんだ!?」
「止めるに決まっておろう! 言っただろう、よく読めと!」
「よ、読んだぞ」
「ほぅ。なら契約書の三行目の文を読んでみよ」
獏がそう言うとカラ松は目線を泳がしながら言葉を詰まらせる。
そんな彼の姿を見て、獏は一つ大きな息を吐きこぼした。
「まったく……現実世界でもほいほいサインなんてするでないぞ。痛い目に遭うのはお前なのだからな」
「わ、分かった……?」
「……契約書の話に戻すぞ。本来ならば自己責任だが、今回だけ特別に我が口頭で説明してやるから、感謝するがいい」
ふふんと誇らしげにそう言う獏に、カラ松は素直に礼の言葉をのべた。
そんな彼に、なんとなく調子を狂わされた獏だが咳ばらいを一つ落とし語り始める。
「その契約書をかいつまんで説明すると、要はお前の悪夢を喰らってやったり良い夢を見せる代わりにお前の一番大切にしているものを貰い受けるぞという事なのだ」
「一番、大切なもの?」
「そうだ。それはお前の命かもしれぬし、もっと別のなにかかもしれん……それでもこの契約書にサインするのか?」
「あぁ」
「って即答か!」
「……だって」
「ん?」
カラ松は顔を俯かせボソボソと何かを呟く。
人間の聴覚なら聞き逃してしまいそうな小さな声だったが、獏の耳にはしっかり、はっきりと届いていた。
"俺はいらない子だから"
カラ松が放ったその言葉に獏は眉をひそめる。
どうやら彼は現実世界で兄弟たちから受けた仕打ちに相当追いつめられているようだ。
彼からは確固たる決意が見て、根負けした獏は小さく息を吐く。
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長月シキカ(プロフ) - 永久さん» はじめまして、作者の長月シキカです。コメントありがとうございます！ 物語の最後の終わり方は中々に難産でしたので、永久様にそう言っていただけて本当に嬉しいです^ - ^ こちらこそ、最後まで閲覧してくださってありがとうございました♪ (7月28日 23時) (
レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
永久(プロフ) - はじめまして！ 永久です！今回この作品を読まして頂きました。とてもストーリーが出来ていて夢主さんのキャラもすっごく良かったです！最後の終わり方もとても心打たれるものでした！最高の作品を作ってくれてありがとうございます！ (7月28日 21時) (レス) @page49 id: 41fe1dd09b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2018年6月25日 23時
