11バク ページ11
思わず涙が零れそうになったカラ松は顔を俯かせる。
その姿を心配してか、道案内をしてくれた蝶が心配そうに飛び回り始めた。
「ほぅ。そいつに気に入られたか」
「っ……この蝶はレディのかい?」
「あぁ。今回はお前をここに連れてくるように頼んでおいたのだよ」
「そういえば、ここは?」
「先ほども言ったろう。ここは夢世界、人々が見る夢が集まる特別な場所だ。まぁ範囲はそう広くないが、お前達の言葉で言うと関東地方までの夢がここに集まるのだ」
「け、結構な広さじゃないか……そうか、ここは夢、ドリームなのか」
よくよく考えたら、ここが現実であれば今のカラ松は松葉杖無しじゃ満足に立つことも出来ないのだ。
しかし、今の彼はどこにも怪我はなく自分の足で地に立っている。
その事実が今のいるこの場所が夢の中であることの証明になった。
「何故言い直した……まぁこの園は我が管轄で本来ならば人間が足を踏み入れる事はまずないのだが、お前の夢があまりに不憫だったのでな。特別に招待してやったのだ。感謝するがいい」
「俺の、夢……っ!」
獏に指摘されカラ松は先ほどまで見ていた自分の夢を思い出した。
あの海水の冷たさを、炎の熱さを、二階から物を投げられた絶望が鮮明によみがえる。
知らず知らずに震え出すカラ松に気付かず、獏は語り続けた。
「お前、相当トラウマになっているのだな。あんな悪夢を何度も見るなんて」
「……やめてくれ」
「誘拐に磔に火あぶり、それに二階から鈍器をそれも血を分けた兄弟の手によって投げつけられるとは」
「やめてくれ」
「よっぽど兄弟たちから嫌われているのか、恨まれているの」
「やめろっ!!!」
空気がビリビリと振動するほどの大声でカラ松は獏の言葉を遮った。
突然の大声に獏は驚き、口を閉じカラ松の方に視線を向ける。
獏の目の前にはその場にしゃがみ込み、自分で自分を守るかのように己を抱きしめ震えるカラ松の姿が視界にうつった。
恐怖に打ち震えるカラ松の姿に困惑しながらも、ステッキを一振りしガーデンテーブルとガーデンチェアを出し、そのテーブルの上にほのかに湯気がたつティーカップを出現させる。
「おい」
「……」
恐怖に支配されているのか獏の声はカラ松の耳に届いていないのか、返事がない。
獏は一つため息をつき、ティーカップを手に取りうずくまっているカラ松の前に差し出した。
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長月シキカ(プロフ) - 永久さん» はじめまして、作者の長月シキカです。コメントありがとうございます! 物語の最後の終わり方は中々に難産でしたので、永久様にそう言っていただけて本当に嬉しいです^ - ^ こちらこそ、最後まで閲覧してくださってありがとうございました♪ (7月28日 23時) (レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
永久(プロフ) - はじめまして! 永久です!今回この作品を読まして頂きました。とてもストーリーが出来ていて夢主さんのキャラもすっごく良かったです!最後の終わり方もとても心打たれるものでした!最高の作品を作ってくれてありがとうございます! (7月28日 21時) (レス) @page49 id: 41fe1dd09b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2018年6月25日 23時