２１無個性 ページ21
そんな相澤先輩の顔を見れなくなった私はその場で体育座りをしてその膝に顔を押し付ける。
「でも、今でも思うんス。自分がそんな事をやっている間にどれだけの人が殺されていったのだろうか。自分がもっと早くあの愚妹を殴ってでも止めていれば、どれだけの人の命を救えただろうか……それを考えると昔の自分を殴り飛ばしてやりたくなるっス」
そう語ると自分の胸の内に悔しさや怒りなどの黒い感情が湧き上がる。
結局、自分は助けられたかもしれない人達を見殺しにしてしまったのだ。
そう考えると私はのしかかる後悔の念に押しつぶされそうになる。
私は黒い感情で熱くなり零れそうになる涙を流さないよう膝に押し付けた。
そんな中、ふと自分の頭に少しの重みと温かさを感じ私はゆっくりと顔をあげる。
すると目の前にはしゃがんで私と目線を合わせた相澤先輩がいて、私の目と彼の目がかち合った。
頭に感じる熱と重みは彼の手のひらのようだ。
「相澤先輩……?」
「……プロヒーローだって全部が全部救えるわけじゃねぇ。俺自身も今までに救ってやれなかった奴がいる。だからってわけじゃねぇが、そんな気負うんじゃねぇ」
低くそれでいて通る声色でそう言いながら、彼は優しく私の頭を撫でていく。
その手を休めることなく、先輩は言葉を続けた。
「お前はずっと義妹に脅されて、誰にも相談できない中ずっと自分の中に抑え込んで理不尽な暴力に耐え続けた。これは決して真似できる事じゃねぇよ」
私を見つめる彼の目が、頭を撫でてくれる手が、語る口調があまりにも優しくて、私の視界が徐々にぼやけてくる。
「事件の事も事件の被害者の事も忘れろとは言わん。だが、そろそろ自分を許しても良いんじゃねぇか?」
彼の言葉に私は自分の目からホロリと雫が落ちるのが分かった。
それを皮切りに私は再び膝に顔を埋め、静かに涙をこぼし続ける。
遺族の方々からは許しを貰えたが、自分自身を許す事が出来なかった私には彼の言葉が本当に嬉しい。
私は私を許していいのだと、この時初めて思った。
しばらく涙を流し続け、だいぶ落ち着いた頃に席を外していたセメントス先輩が差し入れを持ち戻ってきた。
そして赤くなった目をした私を見て、セメントス先輩が何事かと相澤先輩に詰め寄るが彼が先ほどの事を話す事はなかった。
そんな彼の小さな優しさを受け取り、私もセメントス先輩を宥めることに専念した。
勿論、私は彼に感謝の言葉を言うのを忘れてはいない。
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長月シキカ(プロフ) - メホニアンさん» コメントありがとうございます！マイク先生も相澤先生もかっこいいですよね^ ^ 更新頑張りますのでよろしくお願い致します！閲覧感謝です^ ^ (2017年11月28日 13時) (
レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
メホニアン(プロフ) - トマトを食べた後のマイク先生に、キュンとしました。優しい相沢先生に惚れました。更新頑張ってください！！ (2017年11月28日 13時) (レス) id: dbe6c4db20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年11月4日 23時
