２２無個性 ページ22
ガヤガヤと少しだけざわついた大食堂の中に私は足を踏み入れる。
白衣のポケットの中に突っ込んだ小さながま口の小銭入れを握りしめ券売機の前に立った。
今日は何を食べようかな。
大きな券売機のボタンにメニューの紙が貼られた文字を眺めながら悩んでいると、自分の背中の方から私の名前が呼ばれた。
「こんにちは、Aさん」
「……こんにちは」
「ん? あぁこんにちは、通形君に天喰君」
後ろから聞こえた声に振り向くと、そこには私の背をゆうに抜いた通形君とその後ろに隠れるように傍にいる天喰君の姿があった。
一年前も彼らは私よりも背は高かったが、この一年で彼らはまた背が伸びたようだ。
最近の子供の成長はすげぇな。
私なんかこんな劇的な変化はなかったぞ、高校時代。
二人の身長の高さを羨ましい目で見ながら、私は彼らに話しかける。
「二人も食券買いに来たんスね、買うの決まってるのなら先どうぞっス」
「Aさんメニューで迷ってるのなら、日替わりランチがオススメですよ!」
「日替わりランチっスか」
通形君の言葉をオウム返しすると、天喰君が小さな声で「俺達も今日はそれにするんです」と言った。
そんな天喰君に同意するよう通形君は首を縦にする。
まぁ食べたいものも決まってないし、せっかく彼らがオススメしてくれているんだからそれにしよう。
そう思い私は小銭入れから小銭を取り出し券売機に入れ日替わりランチのボタンを押した。
＊
＊
＊
ランチラッシュから日替わりランチを受け取った私は、通形君達に誘われて同じテーブルで食事を取ることになった。
ちなみに、今日の日替わりランチはチキン南蛮定食である。
「うん、美味しい。やっぱりランチラッシュの作る料理は絶品っスね」
「本当ですね。この料理もあと少しで食べおさめかぁ」
「……無事卒業できたら、ね」
「タハーッ! 相変わらずネガティブな事言うな環っ」
定食のメインであるチキン南蛮を口に運びゴクリと喉にいなした天喰君の言葉に、通形君が大袈裟にリアクションをとる。
そんな彼らに小さく笑みながら、私は定食についている味噌汁に口をつけた。
「一年でビッグ３にまでのぼりつめた君らなら、きっと卒業出来るっス。まぁ通形君は座学を気を付けた方が良いと思うっスけどね……また担任の先生が頭抱えてたっスよ」
「あ、アハハ……」
私の言葉に乾いた笑みをこぼす通形君に、私は心の中で彼の担任教師に同情の念を送った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 39人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
長月シキカ(プロフ) - メホニアンさん» コメントありがとうございます！マイク先生も相澤先生もかっこいいですよね^ ^ 更新頑張りますのでよろしくお願い致します！閲覧感謝です^ ^ (2017年11月28日 13時) (
レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
メホニアン(プロフ) - トマトを食べた後のマイク先生に、キュンとしました。優しい相沢先生に惚れました。更新頑張ってください！！ (2017年11月28日 13時) (レス) id: dbe6c4db20 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年11月4日 23時
