【11月1日】2 ☆ ページ2
そうだ、彼はそういう人だった。
いつも人の心が見えているかのような振る舞いで、みんなを安心させてくれる。
寂しくないように。繋がりが切れないように。
そんな優しい夫がベッドサイドに置いてある小さな椅子に腰かける。
それと同時に、私は自分の置かれた状況を急かすような口調で尋ねた。
「先生何て言ってた?赤ちゃんは?」
結弦くんが説明を受けていたことは知っているので、どんな些細なことでも知りたくて無理に上半身を起こす。
モニター画面にはピコピコと双子の心音が波打っているものの、意味もなく不安が押し寄せるのだ。
「うん。ちょっとAの血圧が高いから、赤ちゃん早めに出そうかって。」
「そうなんだ…。」
それを聞いて、再び身体を横たえる私。
さっき看護師さんも血圧がどうの…って言ってんだった。
でも一時間も早くなりそうだと言われて、何とも言えない複雑な気持ちになる。
今朝の私の行動に、何かいけない所があったのかな…。
双子には何の影響もないことを祈るばかりだ。
そんな中、突然見たことのない女性が入ってきた。
「失礼します。」
「あ、よろしくお願いします。」
結弦くんがいつも通りの流れで挨拶をし、さっと立ち上がる。
見た感じ先生のようだけど…。
「はーい。こんな歴史的瞬間に携わることが出来て、麻酔科の医師やってて良かったです!」
予定外の連続で重苦しい空気の私たちに、満面の笑顔を向けられる。
この人も明るい人だな…。
でも麻酔の準備が着々と進んでいくにつれ、また不安が…。
「二人に早く会えるんだから、頑張ろ。」
「うん…。」
結弦くんがガッツポーズをしつつ私を励ましてくれるのだけど、この麻酔だって、部分麻酔とはいえ絶対痛いに決まってる。
「何泣きそうな顔してんの。」
昔から注射は嫌いなのに…と落ち込む私を結弦くんが茶化す。
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鹿(プロフ) - みなみさん» ありがとうございました。妖怪なんて知識ないので、ネットに頼りっぱなしで…。地震のとき、真っ先に羽生さんを心配してしまいますね。どうか無事で! (2021年2月14日 20時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - ついに完結ですね。面白かったですよ。妖怪が絡むお話なんてなかなかないと思いますし。 大きめの地震がありました。うちもけっこう揺れましたけど、仙台はもっと強い揺れだったようで、羽生くんが心配。とにかく、みんなが無事でありますように。 (2021年2月13日 23時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 〜空〜さん» 完結がモットー(*^^*)みなさんに楽しんでもらえたかなー。自分でも作品を読み返すのですが、最初は書きやすいのですが、だんだんネタが尽きてくるパターンが多いです(笑)くっつくまでが楽しいんですよねー。また読みに来てくださいね! (2021年2月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - キャラメル味さん» 最後結構ばたばたと終わらせてしまいましたが楽しんでもらえてよかったです(*^^*)やっぱり羽生さんには女の子だよなーと、妄想してしまいました。兄をサポートするしっかり者の弟。というイメージですかね。 (2021年2月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 璃子さん» ご愛読ありがとうございました(*^^*)今回双子にしたのですが、成長するとどっちがしゃべってるのか分からなくなりそうで難しいかも。結局新しいお話を書いてしまい、またしんどくて楽しい生活が始まってしまった…。 (2021年2月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2020年12月16日 18時