赤と黒のLiberations6

【優しさ】10　☆ ページ35

「とにかくさ、まず私に優しくすることから初めようよ。」

でも結局のところ、全てはここからな気がする。
色々現れるのは、私だけ雑に扱うのは止めなさい！って白狐から羽生くんへの警告かもしれない。いや、きっとそう！

『してるし。あーもう！なんで髭なんか生えるんだよ〜！』

「かわいいよ？」

『かわいくない。』

ちらちらと視界に入って目障りだ。と最もな事を言って机をぽんと叩く。

「髭って猫にとってバランスを保つために重要だって聞いたことあるから、羽生くんもジャンプが跳びやすくなったりするんじゃない？」

『俺は人間だし。あーあ、寝て起きたら消えてねぇかな。』

「ないない。」

『……。』

あ、今本気で睨まれた。冗談なのに。

「そういう所、いちいち本気にするよね。さらっと流せないかなー。」

『無理。』

「そんなんじゃいつまで経っても消えないよ？」

誰にも見えないとはいえ、普通でないことには変わりない。

『じゃあ聞くけどさ、優しくするってどうやんの。』

そんな中、言い方はともかく羽生くんが私の案に食い付いた。

「そうだなー…。ハグとかは出来ないから…やっぱり言葉かな、うん。じゃあ私に、いつも寂しくない？とか聞いてよ。」

『お前…それ自分で言ってて恥ずかしくねぇの。』

思っていることを素直に言っただけなのに、またバカにされてしまった。
こういう所がマイナス１０点だ。

「恥ずかしいけど、たまには思いやりのある言葉が聞きたいの。」

あーしろこーしろではなくて、大丈夫？的な寄り添う言葉が欲しいのだ。
私はペットじゃないんたから。

すると羽生くんが少し考える素振りを見せ、短くてさらさらの髪を両手で耳にかけながら、少し目線を下にした。

通じたのかな…。期待に胸を膨らませて待っていると、意外にもすぐに言葉が発せられた。

『じゃあ…。A、いつも寂しい想いばっかさせて、ごめんな。』

「ふぇ…？」

そのさっきまでとは違う彼の真剣な表情に、一瞬で胸が高鳴る。

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