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【わかるでしょ。】5 ★ ページ42

「あれ?」

「どうしたの?」

着信の相手は姉だった。帰りが遅いから心配したのだろうか。
花山さんが側にいるけど、俺は気にせずにそのまま通話ボタンを押した。

「もしもし?」

携帯の向こうから、久しぶりに家族の声が聞こえて、胸があたたかくなる。

もう数時間もすれば家族団らんの時間が過ごせるのかと思うと、自然と自分の声も弾むものだ。
そんな些細な幸せを想像していると、不意に姉の声のトーンが下がった。

そして姉から伝えられた内容に愕然とし、奈落の底へ突き落とされたような気持ちになる。

「そんな…まじかよ。」

花山さんの車に手をついて、倒れそうになる身体をなんとか支える。

「どうしたの?何かあったの?」

心配する花山さんを横目に、俺は一度携帯を切った。

「自宅にファンがたくさんいて…。パニックになるからホテル取れって言われた…。」

「え!」

「俺んち普通のマンションだから、近所迷惑は避けられないからって…。」

「それは…困ったね…。」

ショックだわ…。
数ヵ月ぶりに実家へ帰れるのを楽しみにしていたのに。

それに今からホテル探すとか、一体今日寝れんの何時だよと思う。

とりあえず実家が無理なのは決定的だ。
今出来ることは、ここから駅の方へ車を走らせながら、携帯でしらみ潰しにホテルに連絡を…。

「Aかい?そこにいるのは。」

これからの段取りで頭がいっぱいいっぱいになっていたら、突然、男性の声が俺たちに向けて投げかけられた。
花山さんの名前を呼んだということは、ご家族だろうか。

「あ、お父さん。」

お父さん?!やべ、騒ぎすぎて起こしてしまったか。

「ここで何をしているのかな?」

お父さんの足音が少しずつ近づいてくる中で、その口調が怒っている話し方でなくてほっとする。
俺は携帯をポケットにしまい、深々とお辞儀をした。

「夜分にすみません。羽生結弦です。」

「え、羽生くん。」

決して大声で驚かないあたり、紳士だなと思う。

「ごめんなさいお父さん。羽生くんがどうしても拝殿にお参りしたいって言ってくれたから、迎えに行ってたの。」

「お参りを?あぁ、確か九尾に取り憑かれてたんだったね。」

花山さんのお父さんは全てをご存知のようで、その場でしみじみと、大変だね。と同情してくださった。

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鹿(プロフ) - 雪菜さん» ありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです。怖い話は苦手です^^;今回は心霊とは違うのですが、和風っぽくしたいなと思ってます!^^ (2019年6月17日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
雪菜(プロフ) - おはようございます、新しい話も面白いです!私は昔から心霊とかそういった話が好きです。本当にあった怖い話という ものがあります。そのなかでも山本まゆりさんの恐怖進行刑(ショックリポート)です面白いので読んで見てください (2019年6月16日 9時) (レス) id: 67e9c24f43 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 心菜さん» 毒ガスが噴き出ているところでしょうか^^調べているときに見たような。あまり九尾ネタが広がらなかったらごめんなさい!今回は短めのお話にしようかなーと、更新早めを目指してます! (2019年6月15日 18時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
心菜(プロフ) - 新作!ありがとうございます。栃木県の那須塩原市に殺傷石と言う所があって、九尾の狐伝説があります。宜しければご参考まで。また楽しみに読ませて頂きます。 (2019年6月14日 21時) (レス) id: 15da2c977a (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 私も調べてみたら、晴明と繋がっていることがわかって、これなら書けるかなーと^^神事とかはもう適当でねつ造ばかりなので、突っ込まないでくださいね〜! (2019年6月14日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鹿 | 作成日時:2019年6月10日 16時

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