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※11.出立前日 風花家 ページ12

山中家の屋敷の近くにある風花家の屋敷の前に立つ。




「お父様ーお母様ー!鈴音、ただ今帰りました!」



いつものことだが応答がない。


このまま立っているのも嫌なので、ずかずかと屋敷の中へ入っていく。




屋敷の廊下を歩いていると、昔の記憶がよみがえってくる。


ここでみんなで遊んだり、お菓子を食べたり、花を司る練習をしたり…幸せに過ごした日々が目に浮かぶ。


そうか…私はここを遠く離れたことがないから、不安なのかもしれない。



「んー…お父様どこにいるのかな…」


お父様のことだから自分の部屋にはいないはずだ。


歩きながら考えていると、思い当たるところがあった。






廊下を小走りし、私とお父様との思い出のーーー



一本の満開の桜の木がさわさわと音をたてながら花びらを散らしている庭で足を止める。




案の定、ひとつの影が庭の片隅でもの思いに耽っていた。



「お父様、ここにいたんですか」



お父様は桜をぼうっと眺めていたが、私の呼びかけでこちらを向く。



「今年も美しく咲いたなぁ…やっぱり鈴音の出す桜はまだまだだな」



「そりゃそうですー。自然の力はとてつもないんですから!」



するとお父様は声をあげて笑い出す。




美しい花を咲かせるこの桜は毎年私たちを優しく見守ってくれている。

今年はなおさら美しく、気高く見えた。








「鈴音」


隣のお父様が珍しく真剣な声で私の名を呼ぶので、少し不審に思った。



「なんですか?お父さ……」



横を見ると、なんとお父様が顔をくしゃくしゃにしているではありませんか。


普段はお調子者なのでこんな不格好な顔をするお父様は初めて見た。


「ど…どうなされたのですか?」



おそるおそる聞いてみると、今度は目から大粒の涙をぽろぽろと流し始めた。


「鈴音ぇ…お前ほんとに、おっきくなったなぁ…」


何をいまさら…。


するとお父様は目に腕をあてて顔を隠しながら泣き続ける。


「絶対…絶対に帰って…くるんだぞ」


泣きじゃくるお父様を見ていると、なぜだか涙腺がゆるくなってきた。



「…当たりまえじゃないですか」









ーー風花家は、



どんな種からも芽を出させてくれて、



蕾のときも優しく見守ってくれて、



花が咲いたときには暖かく迎えてくれる、



大切な、太陽のような存在。




私は絶対にまた帰ってきます。




それまで暫しの別れです。




行って参ります。

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設定タグ:戦国BASARA , 山中鹿之介 ,   
作品ジャンル:アニメ
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小真紀(プロフ) - 鹿君大好きなので読めて嬉しかったです!これからも更新頑張ってくださいませ!応援してますp(^-^)q (2016年10月8日 21時) (レス) id: a061b3425d (このIDを非表示/違反報告)
RYURU(プロフ) - 小真紀さん» こちらこそ読んでくださりありがとうございます!鹿君の初々しい感じ大好きですよ〜(*´∇`*)よろしくお願いします! (2016年10月8日 21時) (レス) id: a26e725e82 (このIDを非表示/違反報告)
小真紀(プロフ) - イベント参加、まことにありがとうございます!鹿君の小説、いいですね!これからも読ませていただきますのでよろしくお願いいたしますm(__)m (2016年10月8日 20時) (レス) id: a061b3425d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:RYURU | 作成日時:2016年8月5日 14時

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