ありのままで ページ7
「A…A」
遠くで声が聞こえる。大好きな、貴方の声が。
「ーーはよ起きんかいぼけがぁ!」
「わっ…!び、びっくりした…」
肩を強く揺すられて目を覚ますと、目の前に美しい容姿を持ったセンラがいた。
「あ、れ…あの二人は?魔法は解けたの?」
「はぁ?二人?魔法?何寝ぼけてんのや」
本当に面倒くさそうに答えるセンラを見て、何故か私は安心してしまった。
良かった、私の知っているセンラだ。
口調は荒いけど、でも何だかんだ言いながらわざわざ私のことを探しに来てくれて。
そういうところが、私はーー
「好き」
「…は?」
「好きだよ、センラ。ずっと、好きだった」
自然に口からこの言葉が出てきた。中々言えずにいたことが、今はすんなりと言える。もうフラれるとかそんなのどうでも良くて。ただ貴方にどうしてもこの気持ちを伝えたかった。
センラは少しの間呆然としていたがやがて少し掠れた声で口を動かした。
「…ごめん」
センラは申し訳ないとでも思っているのか、伏せ目がちに答えた。
「ごめん、俺Aのことは幼馴染としか思ってなかった。Aが俺のこと、そう思ってたなんて、知らんかった」
やっぱりそうだったのか。分かってはいたけど、正面から言われるとやっぱりかなり堪える。けれどそれを彼に悟られたくなくて精一杯の笑顔を向けてみせた。
「…ううん、言えて良かった……もし良かったら、これからも仲良く」
「やから」
私の言葉を遮るようにして出てきた声に、私は不思議に思いながらも彼に耳を傾けた。
「やから、これからはAのこと、ちゃんと意識する。Aのことを恋愛対象として、見てみる。…それでもええか?」
「…え?」
耳を疑った。センラが、見てくれる?私のことを?てっきりフラれて終わりだと思ったのに。
答えは勿論yesに決まっている。けれど、あの『魔法』にかかった時のことが頭を横切った。
「うん、いいよ。でももう一つ、私のお願いを聞いて。
私のことを意識しても、私に対する態度は今までどうり、ありのままでいて。優しい言葉なんてかけなくていいから、そのままのセンラでいて」
「は…なんやそれ」
言葉とは裏腹にセンラはやや弾んだ声を出した。
「こっちの俺でいてだなんて、お前も変わってるなぁ」
「そうかもね」
「なんや、やけに素直やな、今日は」
「うんーー今日は、クリスマスだから」
クリスマスが、私の本当の気持ちに気づかせてくれたから。
18人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ