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「そういえばこれってどこに向かってるの?」
ふと気になったので顔だけ黒崎さんの方へと向けると、運転中だからかチラリと私を見た後すぐに正面へと視線を戻した。
何故か楽しそうにふふっと笑いを零しながら。
「どこだと思う?」
「どこって…」
分からないから聞いてるんだけど…と思ったがいきなり喧嘩腰でいくのもどうかと思うので少し考える素振りを見せてから、適当に頭に浮かんだのをボソッと呟いた。
「…どこかのレストラン?」
「あ〜ご飯食べるってとこだけ合ってる!あ、A夕飯まだだよね?」
「そう言われてたから食べてないよ。…え、でも他にご飯食べるとこって…」
そこでハッとした。
「ホテルってこと…!?」
もう黒崎さんレベルとなると高級ホテルで食事をすることが当たり前になっているってことか。そういえば黒崎家との会食もホテルだったよなぁ、としみじみ思い出す。
すると隣からふ、ふふと何かを必死に我慢しているような声が漏れ、やがてふ、ははっと堪えきれなかったかのような笑い声が車内に響き渡った。
「ちょ、今運転中やからあんま笑わせんとって…!!ふふ、そんな真面目なトーンで何言い出すのかと思ったらっ…!」
「なっ…!!」
こっちは真面目に考えたというのに…!!
何だか真剣になるのも馬鹿らしく思えてしまい、もう知らない、という意味を込めてぷい、と彼に顔を背けた。
黒崎さんは変わらず笑っているからか若干震えた声で、話を続けた。
「じょーだんやって!ね、こっち向いて?」
「お断りします」
「ふふ、そんな怒らんといてって…あ、もう着いちゃう」
その一言で我に返り、パッと窓越しに外の景色を覗くが、それらしい店は見えない。一体何十階まであるんだろう、と数える気も無くなる程の、所謂高層マンションがどん、どん、と並んでいるばかりだ。
本当にこの辺りなの?どうしてこんな住宅街みたいなとこ…
と、そこでまさか、と黒崎さんの方を向いた。
「黒崎さん、もしかして…」
疑いの目で黒崎さんに目を向けると、彼もちょうど私の方を向いていたようで、パチリ、と目が合った後、目を細めて口元に弧を描いた。
「うん、俺の家」
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時雨(プロフ) - おもちもちもちさん» コメントありがとうございます!!そう言っていただけるとこちらのモチベーションにも繋がりますのでとても嬉しいです(; ;)もう少しでまた更新できそうですのでそれまでもうしばらくお待ちいただけるとありがたいです^^* (2020年2月17日 17時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
おもちもちもち - やっっっっべぇめっちゃ好きです…(俺の語彙力飛んでった←)更新楽しみにしてるんで、無理のない程度に頑張ってくださいね!(?) (2020年1月17日 1時) (レス) id: b8721ff069 (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - さくりさん» 返信遅れてすみません…!!コメントありがとうございます!!もう少ししたら更新が出来そうですので、それまでお待ちいただけるとありがたいです…!! (2019年12月5日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
さくり - 初めてコメントをさせていただきます〜、さくりです!この話自分にドストライクすぎてヤバいです…!更新待ってます!! (2019年11月9日 17時) (レス) id: 11e1fd3e2e (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - ぽんずさん» コメント&通知登録ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです、これからも頑張りますね! (2019年7月15日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
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