◆ ページ16
『やっと、俺のものになった』
あの時の黒崎さんの言葉をふと思い出した。『やっと』って一体どういうことだろう。
パンケーキを食べやすいように細かく切る手を止めてじーっと彼を見つめた。
黒崎さんは私の視線には気づいていないらしくケーキを美味しそうに頬張っている。彼もお昼はとってない、との事だったがガラスケースの中のケーキを見た瞬間、迷わずそれに決めていた。もしかしたら彼は相当甘党なのかもしれない。
それに、この食べてる姿、何だか
「…凄い幸せそう、だね」
「ん？やっぱり欲しくなった？」
「そういうことじゃない」
黒崎さんは何をどう勘違いしたのかまたケーキが刺さったフォークを私に向けた。いや美味しそうだけれども。
結局そのケーキも彼の口に入り、ケーキと一緒に頼んでいた紅茶を一口飲んでから彼は口を開いた。
「そりゃ幸せやよ」
「え？」
突然発せられた言葉に思わず聞き返すと彼はティーカップをカチャッとソーサーに置くと、私に向かって微笑んだ。
その笑顔はあの時のような営業スマイルとは全然違くて、優しくて温かくて。
「Aといるんやもん、幸せに決まってるやろ。
俺、Aが何が好きとか何に興味があるとか全然知らへんかったから今日Aはこーゆー店が好きって知れただけでも嬉しいのに今Aとこうして同じ時間を過ごしているなんて、ほんま夢みたい」
「っ…」
何で、彼はそんなことを言うの。
どうして、そんな愛おしそうな瞳で私を見つめるの。
思えば不思議だったのだ。どうして彼は私の講義が終わる時間を知っていたのだろうって。
大学を知りたいのなら義母に聞けば分かるだろうが、講義の終了時刻だなんて、毎回同じではないのでいちいち報告なんてしない。だから、これに関しては義母も知らないはずなのだ。
それなのに、彼は当たり前のように門の前で待っていた。私がいつ出てくるか分からないはずなのに。
いや、それだけじゃない。私が一人で出てくるとも限らない。私が今日何も用事がないとも限らない。
今回は、偶然が重なっただけで100%こうなるとも限らなかったというのに彼は私に会いに来た。
無謀だ、あまりにも。けどその無謀さは私がそうさせているとしたら、余計彼が分からない。どうして、そこまでして私にこだわるのか。
「…」
彼に何て言葉をかけたら良いか分からず、私は口を開くことが出来なかった。
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時雨(プロフ) - おもちもちもちさん» コメントありがとうございます!!そう言っていただけるとこちらのモチベーションにも繋がりますのでとても嬉しいです(; ;)もう少しでまた更新できそうですのでそれまでもうしばらくお待ちいただけるとありがたいです^^* (2020年2月17日 17時) (
レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
おもちもちもち - やっっっっべぇめっちゃ好きです…(俺の語彙力飛んでった←)更新楽しみにしてるんで、無理のない程度に頑張ってくださいね！(？) (2020年1月17日 1時) (レス) id: b8721ff069 (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - さくりさん» 返信遅れてすみません…!!コメントありがとうございます!!もう少ししたら更新が出来そうですので、それまでお待ちいただけるとありがたいです…!! (2019年12月5日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
さくり - 初めてコメントをさせていただきます〜、さくりです！この話自分にドストライクすぎてヤバいです…！更新待ってます！！ (2019年11月9日 17時) (レス) id: 11e1fd3e2e (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - ぽんずさん» コメント＆通知登録ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです、これからも頑張りますね！ (2019年7月15日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
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