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24話 ページ26

Aside





目の前に広がっているのは、私がまだ幼かった頃の光景。昔は住んでいた家でお母さんとお父さんと一緒にご飯を食べていた。



小さな私は、隣に座っているお父さんの皿に自分の分の人参を移そうとしていた。お父さんは気づいていたが、娘の必死さが可愛かったのかニヤけた口元を隠しながらクスクスと笑っていた。



でも、お母さんはちゃんと食べなさいって怒って、結局泣きそうになりながら私は人参を食べた。
えらいねと言いながら父親は私の頭を撫で、嬉しそうに私は笑った。



目の前のあたたかい光景から逃げるようにギュッと目を瞑った。この光景がずっと続けばと願った。



でも、この幸せの物語は続かない。



目を開けると、暗い雲の下でトリオン兵が暴れ回っている光景に切り替わった。
そこら中から悲痛な叫び声が聞こえた。その声が煩わしくて耳を塞ぐ。





聞きたくない、この現実からーーー。




「た...すけて.....。」





耳を塞いでいるはずなのに、声がはっきり聞こえた。男性が血を流し、地面に這いつくばりながら、助けを求めてこちらに手を伸ばしいる。



私は男性の手を掴んだーーーはずだった。
私の手は男性の手をすり抜けて、掴むことは叶わなかった。




後ろからトリオン兵が迫り、男性に刃を下ろそうとしている。






やめて、殺さないで





私は必死に掴もうとするが、意に反して手は通り抜ける。





お願い、お願いだから....もう...





無残にも男性の肉体に刃が刺さる。
私は声にならない悲鳴をあげた。




いやだ、いやだ、いやだ




気づけば四方真っ暗な場所にいた。
立っているか分からない。自分が生きているかさえも分からない。



どこまでも続く暗闇に、膝を抱えてうずくまった。
恐怖、後悔の負の感情が自分に襲いかかる。



もう何も見たくなかった。



崩れてしまう幸せな光景も、悲しい悲鳴が飛び交う世界も、誰かの命が消える瞬間もーーー。





“ たすけてほしい ”





暗くなった世界で私は祈る。




笑い合える仲間ができた。


守りたい人がたくさんできた。




もうその人たちが居なくなるのは嫌なんだ。
でも、自分の手は小さくて全部守ろうと思っても、ポロポロと手から滑り落ちてしまう。



それが落ちないように支えてくれた太刀川隊の力になりたい。一緒にいたい。



私は暗闇の中で手を伸ばす。




“ 守りたい、私が守りたいもの全部 ”




空中に出した手が、誰かに掴まれる感覚がした。

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作者名:いーす | 作成日時:2019年4月30日 17時

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