景虎の話 ページ47
実力テストを乗り切ったバスケ部はプールで練習を行っていた。
此処は相田リコの父が経営するジム。
特別にリコのため、バスケ部のために貸切状態になったこの場所に、いつも練習を観に来るはずの麗白はいない。
「……」
「……」
プールは滑るので危険、そういうことを言われれば大人しくせざるを得ないのは彼女の中で決まってるルールだ。
だがしかし、それ以上に現在気まずいのは、その相田リコの父が経営するジムに麗白もいるということ。
そして何故か目の前に、その父が此方を穴が開きそうなほどに見入られてるということ。
流石の麗白もそこまでされれば黙っているわけにはいかなくなった。
「視線が煩いのう。何の用じゃ」
「……いや、中々に奇抜な格好をしてるからつい」
「やかましい。なんじゃお主は出会い頭に…」
「それより目の前にいるのは大人だ。敬語使え、敬語。たく、最近の若者は……」
「名乗りもしない無礼が、それで罷り通るとでも思うのか?」
「それもそうだな。リコの父、景虎だ。そんでお前は?」
「麗白雪。よろしくのう、お義父さん」
「お義父さんと呼ぶな」
現在パソコンでの作業を行なっているが、目の前に景虎が現れるとまさかの目の前に座った。
作業中は集中してるから良いものの、あまり人に見られてはいけない内容を書いているので背後から見られないかと焦っていた。
「何をしてる?」
「レポート作成じゃ」
「はあ?今の高校生はそんなことやってんのかよ」
「やっておらぬわ。私の家が特殊なだけじゃ。代理当主が仕事が出来ぬ人故、こうして手伝っておるのじゃ」
「良いトコ出の嬢ちゃん、なんだな」
「そうだな。私は地位と金と容姿に恵まれた。じゃが、それだけだ」
「……お前も大変そうだな」
「そうじゃの。こうして老いぼれの体をこき使う兄様が、なんとも腹立たしくて仕方ない。帰ったら殺す」
「ほれ」
目の前に置かれたのは缶ジュース。
ブラックコーヒーの銘柄が付けられた代物だ。
「あんまり自分を追い詰め過ぎるな。それと、俺のリコを口説くことは許さん」
「それ、思春期の娘が父親から言われたく無い言葉じゃぞ」
釘を刺されるも、口説くということが一体何処までの範囲か分からない。
しかし、実の父親から「俺の」と称されるのは反抗期真っ只中の女子高生には百倍恥ずかしいんじゃ無いかと釘を打ち返した。
見事、景虎はその言葉に図星を突かれた。
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作者名:ほんばし | 作成日時:2022年5月6日 16時