食べものを粗末にするなの話 ページ42
飛ばしてひっくり返した小金井を見て、別の席で見ていた高尾もそれをしようと返しをお好み焼きの下部に差し込む。
だが小金井の前に立った彼女はそれを制した。
というより、小金井と言葉を掛けて仁王立ちで小金井を見下ろした。
「食い物を粗末にするな。食い物で遊ぶな。よいな？」
地を這うような低い声に、小金井はしゅんと縮こまった。
高尾もあまりの威圧感に、高く飛ばそうとしたお好み焼きを普通にひっくり返した。
「おっかねぇ…」
「アイツ只者じゃねぇよ。なんであんな声が出るんだ…」
そそくさと戻って、自分はお好み焼きをひっくり返す。
未だに苦戦中のようで見てもいられなくなった高尾が、笠松の隣から立ち上がって彼女の下へ向かう。
「これ、焼き足りないんじゃないの？だからべちゃべちゃになるんだよ。ちょっと貸してみ？」
「私がやっておるのだ。邪魔をするな」
「いいから、いいから」
やはりおっかない人だが、高尾は暫し待ってお好み焼きをひっくり返す。
ちょうどよい焦げ目の付いたお好み焼きが焼きあがった。
「んで、ソースは右上から左下に向けて。マヨネーズはその逆からかけて、鰹節乗っけて、青のり掛けて……ほい、完成！」
「ふむ。やるのう。次こそはやり遂げる。一切れやろう」
「いいって！俺もうお腹いっぱいだし。また分かんなくなったら言ってよ」
一年生３人ズはお腹いっぱいで外へ出ていた。
その先には彼女しかおらず、彼女は未だに失敗したお好み焼きをカービィのように食べている。
見かねて高尾がその近くへ座った。
「それよりさ、アンタ名前は？」
「麗白だ」
「ましろ……誠凛さん達となんか関係あんの？」
「リコ達と同学年じゃ」
「へー、てことは２年生…先輩か。とゆーか……ぶっふっ、喋り方が真ちゃん並みにクセがあるんだけどっ！」
「真ちゃんとは誰の事か？」
「ほら、あそこにいる緑色の髪した男。あれが真ちゃん」
「ふむ……別に喋り方に関しては、きょうだい達からおかしいと口を揃えて言われたばかりじゃが、今更変えようとは思わんよ」
「つっよ。とゆーか、眼帯してるけど何かあったの？」
「昔、火事で皮膚が溶解した。治療で多少治っておるが、こっちは見えないし人様に見せるものでもない。眼帯をしておるだけじゃ」
「あー、そりゃ悪いこと聞いた。それにしても目、綺麗じゃん。外国生まれ？」
「自覚すればよい。生まれは日本じゃよ」
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作者名：ほんばし | 作成日時：2022年5月6日 16時
