相席の話 ページ41
割愛すると、笠松のいたところに緑間を押し込めてカオスな空間を作り出した元凶である黒いのが犯人である。
(あの席カオスだな……言葉が詰まりそう〜)
そんな軽いことを考えながらお好み焼きを口にする。
ソースと鰹節、青のりも掛けられている。
なんとなくたこ焼きに近いものを感じた。
「たこ焼きに近いのう」
「作り方は似てるんだ。違うのは具材くらいかな？」
「ふむ……丸く作れる自信がないのう」
「いやいや、こうやって……ほっと！」
「おお。さすがじゃ」
「麗白先輩は、こういうの作ったことないんですか？」
「そうだな。食べる機会があまり無かったというべきか」
「じゃあ食べましょう。はい、どうぞ」
「おお、ご相伴に与ろうぞ。いただきます」
箸で食べる分には申し分のない柔らかさ、口に含むとしなしなとしたキャベツでなくシャキシャキとした野菜の食感。
ツンと来る酸味は紅しょうが。
豚肉が程よくカリカリと上がっている。
だがやはり、食欲を引き立たせる香りの辛いソースとマヨネーズの相性が良い。
色を見るに、これ以上に最適解ならものなどない。
「うむ、これは美味い。お腹が空いてきたな」
それを聞いて、ぞくりと背筋を凍らせる誠凛一同。
未だに記憶に新しいのが、あのステーキでの一件。
あの時は全部食べれば無料だったので、止めはしなかったが今回はそうでもない。
「ゆ、雪……よく考えなさい。ここは食べ放題の店じゃないからね？皆そんな持ってきてないからね？？」
お金の心配が漂ってきた空気に笠松と黒いの…もとい高尾は目を丸くして誠凛のどんよりとした空気を読み取った。
「何を言っておる。私はバスケ部に所属はしておらん。故に、私に気を遣わんでも自分の分は自分で払う。河原、お主のおすすめを教えておくれ。作れば共に食べてもよい」
「えっ、良いんですか？」
「私が良いと言うのだ。良いに決まっておろう。その代わり、作り方を教えておくれ。あまり作れなんだ」
「あっ、はい！わかりました」
「降旗、福田も手伝え。今日中にマスターするぞ」
こうして怒涛の大食いが始まった。
彼女の無限の胃袋と食欲がお好み焼きを掃除機のように吸い込んでいく。
作っては食べて、作っては食べて。
懸命に作ってる様子に面白そうだと察した小金井は余計なことを吹き込んだ。
「雪ー、これできるー？」
ある程度マスターができたと言うところで、小金井はお好み焼きを宙に飛ばしてひっくり返した。
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作者名：ほんばし | 作成日時：2022年5月6日 16時
