白い梟の傍観事情 (ページ5)

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閑話休題の話ページ5

それは、おそらく何十年も前の話。
アメリカで出会った彼女は、まだ杖をついていなかった。
黒い眼帯をしており、白髪の彼女は兎に角目立った。
ただ、彼女はバスケをしなかった。
曰く「バスケのような激しい運動は控えろ」と言われていた……だが火神の目にはどうしてもそうには見えなかった。
バスケをしていた時、ボールが思わぬところですっぽ抜けてしまい彼女の方へ飛んでいった。

「危ない！」

そんなことを言った矢先、彼女の目の前に手が現れるとボールを弾いて火神たちの方へ怒声を浴びせる。

「危ねぇだろうがテメェら！！コイツに当たったら責任取れんのか！？」

心の奥底から震えるような地響きのような怒声に、火神はおろか他の子供たちも涙ぐみ逃げて行く。
せっかく楽しかった時間も、彼女の隣にいた男が声を荒げて目を吊り上げて怒っているため瞬く間に幕を下ろす事になった。
自分達は悪く無いのにｰｰｰｰｰ……。
彼女に向けたボールも態とではない。
偶然、手からすっぽ抜けて彼女の元へ行ったのだ。
何故自分達がこんなことを言われなくてはならないのだろう。

「んだよ、俺たちもわざとやったんじゃねぇよ！」

そんな理不尽に腹を立てた火神がそう言い返すと、男の怒鳴り声は更に圧が掛かった。

「だったら、わざとじゃ無かったら相手を怪我させていいってことか？おら言ってみろよ！」

「そういうことじゃねぇよ！ただ……」

「ただ楽しくバスケをやってたからしょうがない？そんな言い訳が通用すると思ってんのか！」

歯軋りし、なんとも言えず頭にカッと血が昇ったところで静かに彼らの間に入る女性がいた。

「そこまで」

黒い眼帯を付けた少女は、火神を見下ろした。

「すまぬの。連れがあんな大声出して怒鳴り散らしたら、そりゃあ怖いよな」

「チッ…誰のために言ってると思ってんだ」

呑気に笑いながら男を指差す姿に、今度は彼女に悪態をつく。
火神は屈んだ彼女から頭を撫でられた。

「注意するだけで怒鳴り散らせば子供は萎縮するだろう。それで、お前は何故反発したの？」

子供よりも低い視線で、そう尋ねる彼女に少し恐ろしさを覚えた。
何故反発したのか、そう聞かれ火神は男を指差した。

「こいつのせいだ！」

「そうか。なら、お前が悪いな」

「テメェ……」

「なら、私が怪我したらこいつのせいか？」

火神は黙り込んだ。
他の子たちは逃げてしまい、その場には火神だけが残っていた。