休憩の話 ページ38
正邦との試合が終わる。
勝ったのは、誠凛高校。
決勝進出に彼らはガッツポーズを決めた。
「誠凛、勝ったっスねー……ってどこ行くんスか？」
「誠凛の休憩室じゃ。レモンの蜂蜜漬けを持ってくついでに、リコだけではマッサージの手が回らん。要は手伝いじゃ」
「ああ、いってらっしゃ〜い」
黄瀬が彼女を見送ると、びくびくとした様子で震えていた笠松の震えが何事もなかったように収束した。
「はぁー……あの女、とんでもねぇな」
「何がっスか？」
「一緒にいるだけで雰囲気に飲み込まれそうだった。あいつ、只者じゃねえ」
「えっ、それ笠松先輩が女性慣れしてないからッスよねっ……てイタイ！痛いッス！」
「うるせえ！」
観覧席から抜けた彼女は誠凛のいる休憩室へと向かう。
休憩室は関係者以外立ち入り禁止と書かれてるにも関わらず、彼女は何食わぬ顔顔で関係者のような面持ちで誠凛の控え室をノックした。
「あっ、ちょうど良かった。手伝って！」
「そう来ると思うとった。半分は任せろ」
「任せた！」
彼女はリコ直伝のマッサージを他の部員に施した。
すべてにマッサージをし終えると彼女はバッグの中身からレモンの蜂蜜漬けを取り出した。
「差し入れじゃ。食べろ」
「おお、ありがたい……多いな」
レモンの蜂蜜漬けを２つのタッパーに入れてきており、同時に食べやすいようにしていた。
「今日も見に来てたんですね。麗白さん」
「まあな。私は見る専門じゃからの。それにしても、火神が４ファウル取った時は笑ったのう」
「笑わないでください。本人は至って本気でしたよ？」
「考え無しに突っ込む方が悪い」
「否定はしません」
そんな張本人はぐーすか眠っていた。
「そういえば、黒子。黄色いのとそのキャプテンが来ていたぞ」
「！そうなんですか？」
「同じく誠凛を応援していた。次は秀徳。楽しみにしておるぞ」
「はい」
「これでよいか？リコ」
リコの方を振り返って、リコは「ありがとう！」と礼を述べる。
「では、また後で」
彼女は控え室から出ると、リュックをからって再び観覧席へ足を運ぶ。
平日なので人はいないかと思いきや、夕方になり始めて人の往来が激しくなってき始めていた。
「早う行かねばならんの」
杖を付いて、なるべく走らず。
秀徳と誠凛の試合が始まる。
「あっ、来た来た。こっちッスよー」
黄瀬が妙に馴れ馴れしくなっており、彼女は若干引いていた。
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作者名：ほんばし | 作成日時：2022年5月6日 16時
