２連戦の話 ページ36
その日は雨だった。
雨の日は彼女にとっても油断ならない天気である。
「滑らないよう、お気をつけなさってください。何かあれば、すぐにご連絡を」
「分かっておる。お主は帰って、酒でも飲んでいればよい」
「よいのですか？銀座のいつもの寿司店で飲みますね」
「阿呆が。誰もそこまでしろとは言っておらん。酒は私も飲みたい。色んな酒をちょこっとずつ飲みたい」
※【未成年飲酒ダメ絶対】※
これはあくまで小説の話。
架空世界の話であるため、なんとなーく見逃されるものの本来は彼女は飲んではいけない年齢なのでダメです。
「そう言ってウィスキーをロックで飲んでた人が何を言うのですか…」
「あれは中々にクセが強い。やはり酒は百薬の長というのは間違いない」
「では、今日はどちらが勝つと思われますか？」
「誠凛に決まっておるだろう。それとも、お主は敵である秀徳を応援するのか？」
「まさかそんなこと…」
「帰るときに連絡する。それまでは残念ながら、酒はお預けじゃ。ツマミでも何でも食べてゆっくり過ごせ。よいな？」
「承知しました。では、ご武運を」
タクシーの運転手ならぬ、彼女お抱えの運転手はそのまま走り去っていった。
私服姿のリュックをからった姿は、既にインターハイの誠凛関係者として板についていた。
身長も他の女子より高く、平均的な男子の高さに女子たちは憧れの視線を注いでいた。
「あっ、あんた…」
「ん？」
聞き覚えのある声に体ごと振り向くと、そこには黄瀬の姿ともう一人、海常の
「黄色いのと、海常高校の
残念ながら女性に対する防衛は無いに等しいので、柔らかく笑みを浮かべた彼女に対して笠松は顔を青ざめて距離を取る。
「あっ、笠松さんのことは覚えてるんスね…」
「実直で熱血で男前の選手を覚えておらぬ方が阿呆じゃ」
「それ、俺にも当てはまるっしょ？」
「寝言は寝て言え。お主らもインターハイの試合事情が気になるのかえ？」
あまりにも大人っぽい格好をしてるからか、彼女は笠松より一つ下の学年だがそれすら指摘できないほどに頭の中はこんがらがっていた。
「いい、いや、ああ、そ、そうなんだが……」
「そう身構えずともよい。私は一番上で見る故、お主らとは結局離れねばならん。先に行っておるぞ、黄色いのとキャプテン殿」
そう言って彼女はさっさと行ってしまった。
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作者名：ほんばし | 作成日時：2022年5月6日 16時
