インターハイの話 ページ35
インターハイ予選。
初戦は留学生のいる中堅校のチームとの試合。
観覧席から見守る彼女は一際目立っていた。
私服で来ているので目立つことはないが、１７０もある身長ゆえに長い脚が目立つ。
さらに杖を突いて歩く姿は、観客席にいる人たちからチラホラと視線を感じる。
極め付けに眼帯と白髪。
ここまで厨二臭い人は居ないだろうと嘲笑の的になったりしていたが、彼女は気にすることなく試合風景を眺めていた。
背中には差し入れのドリンクとレモンの蜂蜜漬け。
誠凛の選手のみ差し出してることから、誠凛の関係者であるというのは一目見て分かったのだった。
「今日もありがとな」
「私に出来ることはこれぐらいじゃ。次の試合もこの調子でゆけ」
一同が「はい！」と呟いたところで、彼女は立ち去る。
彼女は自分用のドリンクを飲むと、会場をいち早く後にしたりと何かと注目の的になっていた。
「ほら、また来てる」
「よくあんな姿で来れるよね」
「恥ずかしくないのかな…？」
一応言っておくと、彼女は恥じらいなど捨てている。
プライドも溝川に投げ捨てた。
厨二を拗らせた人というレッテルが貼られるのは致し方なし。
彼女はそんな言葉も気にせず、インターハイを見に行くと、背後を通り過ぎる高校生たちから小言を態と大きな声で聞かされた。
「やーい厨二病〜！」
「右手に隠されてんだろ？秘めた力ぁ！」
「右目隠すとかウケるんだけど」
あからさま過ぎる嫌味。
だが、他人を気にせずに生きると不思議と周りの雑音は聞こえなくなる。
彼女はそう言った自分の容姿に対しての直接的な悪口や、善意の助言という名の悪意の伝播を全て遮断。
揶揄う高校生には目もくれず、座ってインターハイが終わるのを待っていた。
誠凛のいない試合も見ているものの、やはり誠凛と最後に当たるのは秀徳高校だ。
その秀徳高校には、『キセキの世代』緑間真太郎がいる。
アウトサイドからの３Ｐシュートは中々に厄介そうだった。
そして、変わらず彼女はその様子をビデオに収めている。
後にリコに渡す分を撮影してるのだ。
しかも、そのシュートは必ず入る。
中々にありえない軌道を打つが、あの滑らかさは天井に当たってもおかしくない。
「次は最終日か。いやあ、キツそうじゃのう」
杖を持って立ち上がると、リュックをからってその場を後にした。
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作者名：ほんばし | 作成日時：2022年5月6日 16時
