振り回される話 ページ31
今回の遠征はひどく疲れた様子。
海常との試合後の怒涛のグルメ旅。
どれも予想外である。
黄瀬も「帰ったら運動しなきゃ…」と嘆いていた。
「あ、あの……奢ってもらった分は必ず返すんで。その領収書もらえませんか?」
「別に心配は要らぬよ。先輩の好意を甘んじて受け取ることもまた、後輩の特権じゃ。それに、私が強引に誘ってお主らはそれに渋々応じた。それだけの事よ。これしきの端金など奢った範囲にならん」
「……どうせなら、バニラシェイクを奢ってほしかったです」
「もっと腹に溜まるやつ」
「俺は特によかったッスね」
途端、かっかっと笑い出す。
「あいわかった。一応フォローすると黄色いの。お主が休憩場所を提供して充分に休めたからな。着いてきたお主らも私の身を案じてくれた。命に比べれば、安いものじゃよ。故に、主らが気に病むことなど何もない」
彼らを更にフォローをした上で、彼女は駅へと向かった。
「火神、黒子、行くぞ。黄色いの、インターハイ負けるんじゃないぞ」
「うるさいッスね。分かってるッスよ」
それから彼らは帰路を共にした。
神奈川から誠凛へ帰ると、体育館で軽いアップをしていた部員たちに黒子は囲まれて逆エビの刑に処された。
「では、私はこれで失礼する」
「ああ、ちょい待ち。雪は無理して来なくていいからね。身体を大事にして」
「わかっておる。リコも、夜ふかしは出来る限りするな。睡眠不足は女の大敵、それにお主は皆の心の支え。倒れてもらっては困る」
「……っ、わかってるわよ!」
「それと黒子と火神は私が途中でキツくなってな。無理やり休憩に付き合ってもらったんじゃ。私に免じて許してくれ」
彼女は頭を下げて、リコに許しを乞う。
流石に頭を下げるとは思わずリコは慌てた様子で「大丈夫」と言った。
「それを知ってて逆エビの刑だから」
「ならば致し方なし」
元より彼女はリコに謝ることはあっても、止める権限はない。
バスケ部に入部していない彼女は、バスケの見学に来ることはあっても必要最低限はしないのだ。
その見返りとして、ビデオやらスポドリなどマネージャーのような雑務を行なっている。
それはリコの負担を減らすためにやっていることなのだ。
「すまぬのう、黒子。私はリコの味方じゃ」
ふふふと笑ったまま、彼女はそのまま帰ろうとしたが火神に止められ、数人の集団下校の下で彼女は家へと帰された。
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作者名:ほんばし | 作成日時:2022年5月6日 16時