再会する話 ページ4
彼女はリュックを背負い、ある場所へと歩を進める。
コツコツと杖を付いて向かった先は体育館。
２階に上がれる場所から階段を登っていき、入り口の手前で腰を下ろすと一息付いた。
しばらくすると、がやがやと人の賑やかな声が聞こえてきた。
普段通りにする人たち、それから新学期に似つかわしく挙動不審で緊張しながら現れた仮の新入生に内心ほくそ笑んだ。
「うむうむ、楽しそうでなにより」
新入生の初々しい反応、他では見られない恒例行事、そして影が薄くて忘れられた者がいきなり目の前に現れて悲鳴をあげる様は「青春」という一言で片付けられる。
ちなみにだが、彼女も影が薄い新入生を見つけられなった。
そして、あの悲鳴が起きる。
悲鳴が起きると彼女も流石に不審者が現れたと思い手に持っていた杖に力を込めて、不審者の出入りに目を見張る。
新入生の一人が此方を指差しているので、彼女は思わず背後を取られたかと思い、あくまで冷静にゆっくり後ろを振り向いた。
振り向いたが、人はいない。
いれば幽霊か何かだろう。
そう考え、もう一度向き直るが指差している新入生は未だに此方の方を指差していた。
「……これは、私か」
それはそれで面白いと彼女はそれ以降は何も言うことなく、騒ぐ様を楽しんでいた。
「……あいつは」
それから、練習を始めるといつもの掛け声やボールの弾む音、そしてホイッスルやシューズの音が聞こえる。
正直、彼女自身はこの時間はあまり楽しくない。
それでも見下ろしているのは、彼女自身ではなく、また別の理由があるからだった。
体育館から見下ろす景色、実は近くはあまり見えていない。
ぼんやり、うっすらとしておりモノクルを付けないとはっきりとは見えない。
「今日はここまで！」
「ありがとうございました！！」
今日が終わる掛け声によって、彼女も立ち上がり階段へと向かった。
その途中、思いもよらぬ人物から声を掛けられた。
「やっぱ、お前だったんだな……」
「童。相手を尋ねるときは、自分から名乗れ」
「ア”ァン？覚えてるだろ！火神大我だ！！」
「火神、大我……。奇遇じゃのう。確か私がアメリカにいたとき、同じ名前の童がいてのう。バスケを馬鹿みたいに愛していたな……」
「それが俺だっての！！」
「冗談だ。久しいのう、火神」
「………久しぶりだな、スノウ」
久しぶりの再会に、彼女の顔は綻んでいた。
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作者名：ほんばし | 作成日時：2022年5月6日 16時
