控える話 ページ28
結果は圧勝。
『キセキの世代』2人と帰国子女の火神に、アマチュアが勝てるはずもなかった。
「主らも早う帰れ。それと、お大事にな」
姉御気質な感じの女性からボールを手渡され、微笑みを向けられると彼らは「はい…」と返事して、その場から立ち去っていったのだった。
結局その場は不良達に明け渡されることとなったが、みっともなく転がってる様を写真に撮っていた。
「無様じゃのう彼奴らも」
「流石に酷いと思いますよ」
「暴力を振るってよいのは、暴力を振るわれる覚悟のあるやつだけじゃ。それを何の覚悟もない者が寄ってたかって行使して、さぞかし気持ちがよかっただろうな」
彼女は正義のつもりでやっているらしい。
だがそれは、火神にはあまる話だった。
「ああ?また殴ったのかよ」
「殴ってはおらんよ。杖で足を突いただけじゃ」
「そのあとあの人のお腹を殴ってましたよね?」
「……何のことやら」
「おい、マジでやめとけよ。喧嘩したら捕まっからな」
「自重するとしよう」
「それに、また倒れても知らねぇぞ。そしたらバスケも見られたもんじゃねぇ」
「うむ、一理ある」
火神の言うことを素直に聞き入れる彼女だが、一理あるの部分に疑問を抱く黄瀬。
「一理しかないでしょ……つーかアレで喧嘩慣れしてるんスか?」
「麗白さん、激しい運動はさせられないんですね」
そのことを尋ねた黒子に彼女は「ああ」と答えた。
「心臓が良くないものでな。軽い運動ならまだしも、激しい運動をすれば、いつ発作が起きてもおかしくない」
「……じゃあその杖は?」
「ああ。自分が弱いことを自覚しろと、兄様に渡されたのじゃ。いわゆる戒めじゃよ」
「別に足が悪いとかじゃないんですね」
「そうじゃ。階段を駆け降りるだけでも、激しい運動と見做されることもあるからの。ゆっくりと歩くために、杖を付いておるのじゃ」
彼女には兄がいる。
それだけでも驚きだが、そんな危険をおかしてまで彼女はバスケを見に行く気概は凄まじいものだった。
「あんた、そんなに弱かったんスか……」
「ちなみにこっちもモノクルが無いと近くのものが見えん。今はカラコンを入れておるが、実際は白いのじゃ」
「そーなの!?」
カラーコンタクトであることを明かされ、3人は眼を見開いた。
だがそれでも違和感はない。
黄瀬は無情にも好奇心が勝って次は髪について尋ねようとした。
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作者名:ほんばし | 作成日時:2022年5月6日 16時