ステーキの話 ページ25
彼女は見た目に反して、自分の何倍も量もある大食漢である。
頬張ったステーキは口の中で油が爆ぜる。
同時にバターの香りと僅かな塩味がステーキ肉の旨味を共に引き立たせる。
そんな美味しそうに食べる彼女を見て、食欲が沸いた部員は彼女を見習って食べ始める。
柔らかくも歯応えのある肉の塊、噛めば噛むほど油と牛肉の香りが引き立って、肉の繊維が口の中で舞い踊る。
「ごはんほしい」
なんとご飯を頼みやがった。
「ちょっ…ご飯は有料よ？」
「私は自分の分は持ってきてる。大体３万ぐらいか」
普通に全員でレストランで頼んでもお釣りが返ってきそう。
そうこうしてる内に彼女の前にあったステーキは既に半分を終えようとしていた。
「うむ……中々に歯応えのよい肉味。これは朝ごはんを抜いてきた甲斐があったのう」
ご飯がやって来るとご飯と共に大きな肉を食べ始める。
「ご飯より肉の方が多いというのは……中々に見ない光景じゃ」
そうしていく内にご飯はあまって肉は食べきった。
「足りぬのう。どれ、もう一つ……」
「あの麗白さん」
ドリンクバーを頼む時のようなノリで、あのステーキを頼みそうになった彼女に黒子は止めた。
「僕の分、食べてくれませんか？」
「良いのかえ？こんな機会は滅多にないぞ」
「はい。僕もうギブです」
「それはそれは。ならば遠慮なく受け取ろうぞ」
「はい。ありがとうございます」
そして彼女とは席の離れた火神もまたおかわりも要求していた。
バスケ部一同は、あまりにも大食漢な２人に開いた方が塞がらない。
だが、もっともヤバかったのは麗白の方だった。
「……肉ばかりで飽きたのう。次は寿司を食いに行くか」
まだ食べるつもりだった。
しかも見た感じお腹が張ってるということはなく、寧ろお腹が鳴っている。
どうなってんだお腹。
無限の食欲にステーキ店の店長も顔を真っ青にして２人に出禁シールを泣きながら貼っていた。
「どっかに悪徳な食べ放題の店は無いかえ？そこの店ならば食い尽くしても問題なかろう。何より、食べ物は大事にせねばならぬのでの」
携帯で調べている彼女の食欲に、他のバスケ部員たちは脱帽するばかりだった。
「こら、そこまで。今は帰るわよ。食べるならその後になさい」
「おやおや、リコからそう言われては敵わぬ。それより黒子は何処へ？」
「へっ？……あっ、いない！！」
リコは辺りを見渡してからその事実に気づいたのだった。
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作者名：ほんばし | 作成日時：2022年5月6日 16時
