麗白の話 ページ21
相田リコは知っている。
彼女が何故、男の扱いが上手いのか。
彼女には彼氏がいる。
それを知ったのは、リコ自身の口からふとこぼれた男の扱い方に対する彼女への不満であった。
高校一年生の頃、バスケ部が発足したと同時に麗白は現れた。
その様子はまるで獲物が育つのを待つ梟のように、常に上から見下ろしていて、ある日の帰りに彼女を捕まえた。
最初こそ、彼女をバスケ部に勧誘しようとしたわけではなく彼女が何故バスケ部に杖をついて来ているのかに疑問があって尋ねたのだった。
それから彼女は、あまり自分のことを曝け出さない様子で、リコの質問にはのらりくらりと交わしていた。
ふと携帯が鳴って彼女が深くため息をついて携帯を見る様子がふと気になって覗いてしまった。
そこには英文で書かれたメール文書が簡潔に表されており、彼女はそれに対しても簡潔な文を送った後に携帯をポケットにしまう。
しかしその数秒後には携帯から振動が止まなくなった。
「相田、すまぬの。しばし待たれよ」
携帯を手に取ると、リコでもわかるような単語で会話がなされた。
だがあまりにも簡潔な文にリコは電話の相手は相当彼女が嫌っている人から掛かってきたのだなと思い込んだ。
罵詈雑言というかシンプルな悪口、その様子を間近で見て気にならない方がおかしい。
「あの、気になったんだけど誰からの電話だった？」
おそるおそるリコが尋ねると、彼女は少し考えてこう言った。
「元カレ……みたいなもんじゃ」
「……え"？」
元カレ、つまりはそう言う事だ。
しかも会話の相手が日本人でないことは確かだった。
連絡先が入っているのも違和感を抱く。
しかし「みたいなもん」という発言が引っかかった。
「なんで「みたいなもん」なの？」
「いやなに……こちらに来る前に大喧嘩してな。半ば無理やりこっちに来たようなものじゃ」
どうやら円満な別れ方はしていなかったらしい。
リコはあまりにも些事過ぎる人間関係に溜息を吐いた。
「せめて円満な別れ方をしなさいよ…」
「ちゃんと伝えたはずなのにな。私はしばらく日本にいることを伝えたのだがのう……まったく馬鹿なヤツよ」
そう言う彼女の顔はいつになく綻んでいた。
「恋した乙女」がする魅入ってしまいそうなほどの惚気た顔だった。
だが彼女はそれ以来「相田」ではなく「リコ」と呼ぶようになった。
詳細は、リコも知らない。
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作者名：ほんばし | 作成日時：2022年5月6日 16時
