関係ない話 ページ3
何故、特別教室に教育実習の先生が入れられたのかと言うと、単純に彼女から指名を受けたのだ。
だが此処がキャバクラなら兎も角、先生を指名するとはどういう了見であるかと誰もがツッコミを入れたが、曰く彼女は扱いやすいとのことである。
そして、それは正しかった。
彼女は人柄がよく生徒からも人気はあるが、生徒との距離を保たないといけないという観点のある先生の共通認識で追い詰められたのである。
しかし、先生である以上は授業を受けなくてはいけないのだが、実際此処にいる先生よりかは彼女の方が実にしっかりしていた。
「あの、ここって分かりやすいですか？」
「そうじゃのう……もう少し身近な例として人間関係を挙げた方が親しみが良い。私らの年代であれば、韓流ドラマのどろどろとして殺伐とした関係を挙げると、どれだけ複雑な関係なのかを知らしめることが出来るやもしれん」
２人で授業に対する理解を深め合っていた。
授業を教える側は生徒の好みを把握して、授業に挑むということをしなければならないというハードルがあり、彼女は好みを把握しているというか適当に言っているだけである。
「もう！もっと真面目に言ってください！」
「真面目に言っておる。そもそも、生徒の好みなど把握する必要はない。勉学はあくまで個人が頑張るもの……そのやり方を教えただけに過ぎん。私の場合は、人間関係が最も近く、リアリティのあるものだと思っている。故に、万人の好む授業にしようとすればする程幅は広がり授業が脱線する。先生はまず、引き際を見極めろ」
「だって、好きなんですもん」
「好みを押し付けるな。そもそも、その話をされたとて『だから？』と反応されるのが目に見えておる。この時期の学生はとにかく反抗期、自己確立の発展途上だ。あえてぼかすことも必要ではないか？」
「う〜ん……難しいですね」
「お主、どうやって教員免許を取ったんじゃ」
ちなみに話していた科目は数学。
国語じみた会話に聞こえたが、数学なのである。
この学生が教えることは、あまりにもオリジナリティがすぎて恐らく参考にもならないのだが、果たして気づくかはまた別の話である。
そうやって授業の試行錯誤を行いつつも、授業を行なっていると授業終了の合図が鳴り止む前に、この特別教室に携帯のアラームが鳴り響く。
「はーい、今日は終わりです」
「うむ。それでは、良い放課後を」
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作者名：ほんばし | 作成日時：2022年5月6日 16時
