キセキの話 ページ19
「『キセキの世代』っつーのは、１０年に１人の天才が５人いたからそう言われたんスよ。それに、さっき俺とそいつが1on1したの見てなかったんスか？」
「1on1をしたのか。私のいない所で……」
あからさまに絶望した様子を浮かべた彼女だったが、黄瀬は何を勘違いしたのかその圧倒的な強さを前に歯を食いしばる相手に対して格の違いを教えた。
「だーかーら。
話は終わったと黄瀬は黒子の方に笑顔で振り向く。
「つーことで、黒子っちもらって良いッスか？ぶっちゃけた話、黒子っちをこんな所で埋もれさせたく無いんスよ。俺、本気っスよ。また黒子っちとバスケしたいってゆーのも」
ところが再び彼女が前に立つ。
「部員の引き抜きはさせぬぞ童。いくら薄いのがお気に入りでもな、相手の意見を聞かねば唯の誘拐だ」
「薄いのって、しかも俺と対して変わんなくないッスかその発言！？」
「麗白さん、安心してください。僕は黄瀬君のところへは行きませんよ」
「なんか色々とヒドイ！！」
「そうか。それは安心じゃ」
「なんかそこで手を組んでません！？２人して俺の扱いがひど過ぎるッス！！」
事前に口裏を合わせたわけでもなく、ダブルコンボを決められて黄瀬はわんわんと泣き始める。
流石に哀れに思えてきたのか、周りが黄瀬に対して同情を寄せる。
しかし一部は「ざまあ」と嘲笑していた。
なんやかんやイケメンを気に食わない男子はいるらしい。
「つーか、さっきから黄色いのって何スか！俺には黄瀬涼太ってゆー名前があるんスけど」
「お主の名前を呼ぶのに、何故お主に命令されねばならんのだ？黄色いのは黄色いのだ。私がそう言うのだからお主は気にしなければよい」
「話通じねぇッスけど！？何なんスかこの女！」
「諦めろ。こいつは人の名前を言いやしねぇからな。こいつ」
「何なんスかそれ……まるで犬みたいッスね」
「お主に言われとうない」
犬よりも犬っぽい彼に犬呼ばわりを受けて、心底嫌そうな表情で黄瀬を睨む。
その圧がやはり、先ほどの状況を作り出したヤツだからか黄瀬は更に震え上がる。
「そろそろ帰るッス、じゃあね黒子っち！」
「黄瀬君、入校許可証はちゃんと返してくださいね」
「わ、分かってるッス……」
その後、黄瀬はちゃんと入校許可証を事務員に返して帰宅したのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 20人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ほんばし | 作成日時：2022年5月6日 16時
