シンデレラグレイ ~TH&JK~ (ページ3)

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『まずここに指置いて。
そっからここに移動して。そう』

「難しいってば」

『大丈夫』

意味のわからない状況だった。
無理やり弾かせようとする彼も意味がわからなかったし、やる気もないのに留まるわたしも意味がわからない。

でもただ、後ろから指を重ねてサポートする彼の声が耳元に響いて、わたしはくすぐったさと恥ずかしさで何も出来なかった。

・

『よし、今日はここまでね』

「何これ。わたし教えて欲しいなんて言ってな…

『また雨が降った時に、ここに来て』

彼はわたしにまったく隙を与えてくれなくて、わたしは彼の流れに飲み込まれてしまう。

「なんで…雨の日？」

『俺、雨が好きなの』

「わたしは嫌い。大嫌い」

『あっそー』

ホントにこの人はぶっきらぼうで自分勝手。
そのまま何を言わずに出ていこうとする彼を、腕を掴んで止めた。

「名前は？」

彼はわたしの腕に視線を落とした後、もう一度わたしの目を見て言った。

『テヒョン』

そしてわたしの手を振りほどいて出て行こうとする。

「わたしの名前は聞かないの？」

『もう知ってる』

本当にどこにも隙がない。
わたしが何か言う前に彼は音楽室を出て行った。