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「…誰?」
そう聞いたのに、その男は答えることも無くこちらへ近寄ってくる。
『どいて?』
わたしの目を見ることも無いままわたしを退かすと、その椅子に座って慣れた手つきで鍵盤に指を置いた。
うわ、懐かしい、と小さく漏らしながらいよいよその指たちを動かし始める。
・
綺麗な音色だった。
多分聞いたことのある曲なんだけど、名前はまったく分からない。
でもとても神秘的な曲。
たしかにこの腕前なら、初対面でヘタクソと言われるのにも納得だった。
わたしはその曲に聞き入るように目を瞑って、雨の見える窓にもたれかかった。
弾き終えたのを確認して、わたしがこの曲何?と尋ねると、
『月の光。ドビュッシーの』
そう言ってこちらを向いて、彼は“おいで?”というように手招きをした。
わたしは彼が何をしたいのか分かったような気がしたから。
「わたし、ピアノは分からない」
そう言うと、
『何とかなるでしょ』
と、もう一度手招きをした。
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作者名:Sheee | 作成日時:2021年9月18日 19時