蒸留酒入りチョコレヰトの小夜曲【twst】 (ページ39)

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「……さあ、どうします？
　僕と取引し、契約書にサインしますか？」

迷っている時間が無駄だ、とアズールはAに決断を強いる。

早く決めろと急かされ、以前のコニーのように極限まで判断力を鈍らされた彼は、

「契約……するっ！！」

「いいでしょう！では、この契約書にサインを。」

パチン、と指を鳴らし、これまた以前と同じく周到に用意していた契約書とペンをローテーブルの上に出す。

黄金色に輝くその紙面には、

『契約者 A(以下、「甲」という。)と事業者アズール・アーシェングロット(以下、乙という。)とは、以下のとおり取引基本契約を締結する。

　第1条甲は三日後の日没を期限として、アトランティカ記念博物館からリエーレ王子の来館記念写真を奪取し、乙の元へ届ける。

　第2条甲は第1条の内容を達成するまでの間、担保としてオンボロ寮の使用権を乙に提供する。

　第3条甲が第1条の内容を達成した場合、乙はオンボロ寮の使用権を返還し、乙と契約を交わした生徒 225名の自由を保障する。

　第4条甲が契約期限までに第1条の内容を達成できなかった場合、オンボロ寮の使用権は永久的に乙の所有物となり、甲はその自己所有権を以て契約不履行の補填をする。』

その内容を確認したAは、握り締めたペンの先を署名欄に走らせた。

黒いインクが彼の名を記した直後、

「……さて、これでAさんとの契約は完了です。
　が、先程も申し上げた通り、エインズワースさんの声はヴィーゲンさんかオノザワさんとの契約でしか保障しません。

　さあ、お二人はどうしますか？」

ぐっ……とシノが歯噛みする。

コニーの声が懸かっているのなら、最初からこちらに選択権などない。

どうにでもなれ、と向こう見ずな覚悟で彼女はペンを執ろうとするが、その手をアンナが握って制止した。

「……アンナ？」

「あなたがサインする必要はありません。
　捺印と署名にはもう少し慎重になった方がいいですよ。

　……アズールさん。この契約書には、私の名義でサインさせてもらいます。」