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033. ページ35

完成したメニューのサービング、皿洗い、フードの盛り付け、ドリンク作り。


なかなかの重労働を終え 客足が落ち着いた頃に、Aは ふう、と額の汗を拭った。


そこへ、甲高い拍手の音が響き渡る。


コツ、と革靴の底を鳴らして店の奥から出てきたのは、



「……あれだけの混雑を捌ききるとは、見事なヘルプです。」



大変お待たせ致しました、と店内 最深部のVIPルームへ手招きする支配人の登場に、五人の間に漂う空気が ぴりつく。


ソファに そっくり返っていたシノは がばりと体を起こし、LLサイズのパンケーキを堪能していたアンナも顔を上げた。


お客様にお茶のご用意を、と双子を従えるアズールを見据えながら、アンナはズレた眼鏡を かけ直し、



「……ここからが勝負所、ですね」


「カッコつけるのは いいけどさ、まずは口の周りのクリーム拭こうぜ」



*


場所は変わり、ラウンジ内部のVIPルーム。


ウツボの双子を背後に侍らせ 余裕たっぷりに構えるアズールを、一同は射貫くような眼光で見据えていた。



「……それで? 僕に相談というのは?」


「僕たちから あなたにお願いしたいことは、二つあります。

 ……一つは、下僕にしている生徒たちを自由にしてほしい。」


「それから、もう一つ。コニーから奪った声を返せ。」



五人分の敵意に晒されて 尚、横暴なことを仰る、と彼は声高に笑った。


彼らの これまでの所業を考えれば、むしろ五人という数は まだ少ない方なのかもしれない。



「僕と契約した生徒 225人の解放と、コンスタンス・ディアナ・エインズワースさんに お支払い頂いた声の返還ですって?」



一学年分の人数を軽く超える 契約者の数に驚いたジャックが、その金色の目を見開く。


未だ 貼り付けた笑顔を崩さないアズールは、今年はジェイドとフロイドが 精力的に営業活動を してくれましてねぇ、と呟いた。



「『営業活動』、ねぇ……」



そう独り言ちたシノが、横目で隣のコニーを見やる。


まんまと その罠に嵌められた彼女は、肩身の狭さから 革張りのソファの上で縮こまった。



一方で、彼女たちの正面に座るアズールは、呆れたように肩を竦めてみせた。


対策ノートを借りた生徒たちも 惚れ薬を受け取ったコニーも、全員 自分との合意の上で契約を交わしたのだ、と。

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作品ジャンル:ラブコメ
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茨の國のぼっち(プロフ) - フォントから、ユニーク魔法から、文章から、全てにおいてセンスが良さすぎます!前章に引き続き、この章も楽しく読ませていただきました! (2021年1月17日 1時) (レス) id: 9a68fed22a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:擂糸 | 作成日時:2020年9月27日 12時

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