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025. ページ27

うーん、どうしたものか。


少年は、頭を抱えて困り果てていた。


彼の側に、いつも連れているはずの魔獣の姿はない。



この世界では 少しばかり珍しい、漆黒の髪と瞳。


どこの寮にも属していない ことを示す、灰色の腕章。


そう、彼は『異世界からの迷い子』こと、オンボロ寮の監督生・Aであった。



ところで彼は、一体 何に対して 気を揉んでいるのか。


それは、浅はかで怠惰な 彼の寮生と二人の友人、そして相変わらず無責任な学園長のことだった。



ウィンターホリデー直前の期末試験が終わり、その結果が発表されたのが つい先日のこと。


深海の商人ことアズール・アーシェングロットからテスト対策ノートを借りた 例の三バカは、
見事 契約達成条件の上位50位以内から あぶれ、彼に都合よく 顎で使われる奴 隷にされてしまったのである。



いくら自業自得とはいえ、ほぼ人権剥奪状態に ある相棒や級友を見捨てることは できない。


おまけにAは、アズールの悪徳商法を止めるよう 学園長の勅命まで受けてしまった。


どうにか しなければという自覚はあるものの、魔法も使えない自分に 一体 何を どうしろと言うのか。



そう悩んだ矢先に 彼に甘言を囁いてきたのが、例の双子である。


オクタヴィネルの寮長たるアズールに相談すれば、イソギンチャク付きになった 友人たちの身柄を解放する ことだって容易い、と。


向こうから イソギンチャクたちの解放を申し出てくれるとは、願ってもない幸運だ。



だが、Aも疑うことを知らないほど 愚かではなかった。


十中八九、これは罠だろう。


彼らの勧め通りに ノコノコと『モストロ・ラウンジ』を訪れるのは、あまりに迂闊だ。


かといって、それ以外の手段が思い浮かぶわけでもない。



「で、どうするんだA。アイツらの口車に乗るのか?」


「うーん、話をしてみるだけ、なら……」



厚意からアズール偵察計画に同行して くれていたジャックに問われ、Aは深いため息を吐いた。


否定しようのない どん詰まりである。



……その瞬間、悩める彼らの すぐ隣を、ここでは非常に稀有な存在であるはずの スカートを翻して歩く影が横切った。

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作品ジャンル:ラブコメ
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茨の國のぼっち(プロフ) - フォントから、ユニーク魔法から、文章から、全てにおいてセンスが良さすぎます!前章に引き続き、この章も楽しく読ませていただきました! (2021年1月17日 1時) (レス) id: 9a68fed22a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:擂糸 | 作成日時:2020年9月27日 12時

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