蒸留酒入りチョコレヰトの小夜曲【twst】 (ページ26)

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そして、話は現在に戻る。

突如シノから絶交にも近いことを宣言されたフロイドは、当然その耳を疑った。

意図せずに彼女を怒らせるようなことをしただろうか、と思考を巡らせる。

だがそんな記憶はないし、何よりシノの眼光は、怒りではなく敵意に匹敵する色を宿していた。

「……何それ。オレシャコちゃんに何かした？」

「いいや、諸悪の根源はお前らのボスだ。

　……けど、あたしは大事な友達を嵌めた奴らと仲良くできる程お人好しじゃないんだ。」

その言葉から、彼もシノから向けられる敵意の所以に辿り着いた。

少し前に、アロワナちゃんがアズールと契約を交わしに来ていたな、と。

金銭なのか何らかの能力なのかは知らないが、十中八九彼女は高い代償を支払わされたのだろう。

「アロワナちゃん何取られたの？金？魔法？」

「……声だよ。アイツは魔法士辞めるか辞めないかの瀬戸際に立たされてんだ、お前のボスの所為でな。」

シノの返答は、フロイドにとって少々予想外だった。

魔法士の卵が集まるこの学校で契約の対価として遣り取りされるのは、大半が契約者の所有する魔法だ。

その次点がマドルである。

代償として『声』を奪うなんて珍しい。

そんなのはアズールがユニーク魔法を完成させたミドルスクールの頃以来じゃないだろうか、と彼は独り言ちる。

相も変わらず眦を吊り上げたまま、シノは懐から魔法石の付いたロザリオを取り出して握り締めた。

NRCにおけるマジカルペンに相当するそれは、学生証であると同時に、彼女に与えられた唯一の攻撃手段でもある。

そして、金色に輝くその切っ先をフロイドの喉元へ真っ直ぐに突き付け、

「いいか、これは試験留学生(あたしたち)からオクタヴィネル(おまえら)への『宣戦布告』だ。

　コニーの声を奪い返すためなら、あたしは手段を選ばない。」

「言ってくれんじゃん。

　……いーよ、シャコはウツボの餌だってこと分からせたげる。」

シノの挑発を受け、フロイドも胸ポケットから出したマジカルペンを、彼女のロザリオに交差させる。

後に他寮の下級生すら巻き込むことになる彼らの戦いの火蓋が、切って落とされた瞬間だった。