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ニノが見せるのは
やっぱり智君に対しての気遣い｡
どんなに憎まれ口叩いたって
ニノ本来の優しさからくる、細やかな気遣いだ｡
……確かに初音とのことは、
未だに智君の心の襞に刺さったまんまであろう出来ごとの筈｡
誰にでも軽はずみにベラベラ喋る話じゃない｡
だけどニノなら、智君のそんな経験を知っていていいと思った｡
智君にとってニノは、
味わった苦さを共有してもいい相手なんじゃないかって思ったから｡
｢……確かに初音とのことは、智君にとってほろ苦い経験だったんだと思うよ｡
『別離』を、思い知らされたんだから……｣
｢智も……、初音ちゃんのコト…、好き…だったのかな…？｣
戸惑いがちに向けられる物憂げな瞳｡
おれは投げられた言葉に静かに首を振った｡
｢どうだろ？
おれの見てる限り、そんなふうには感じなかったけど｡
なに？
今度はヤキモチ？｣
｢翔さん!!!!｣
顔を赤くして怒るニノに、思わず声上げて笑ってしまう｡
｢冗談だよ、冗談!
あのね?
ハッキリ言えることは、ニノに見せるほど智君は初音に対して心を開いてなかったってこと｡
ニノはいろんな意味で智君にとって『特別』だ。
だからそう拗ねないで(笑)｣
｢//べ、別に拗ねてないし!!｣
ニノの顔がトマトみたいに赤くなって否定した瞬間
｢ニノ〜、お待たせ!!｣
階段を慌てて下りながら、潤がニノを呼んだ｡
｢いや、大丈夫｡
オレも今、食器洗い終わったばかだから｡｣
浮かんだ羞恥を振り払うようにして、ニノは立ち上がる｡
華奢な印象の背中に声をかけた｡
｢二人とも、午後から雨が降ってくるみたいだから傘忘れずに持ってけよ｡｣
｢はぁ〜い、行ってきまぁす｣
ニノは小さな鞄を持つと、潤と一緒にキッチンを出ていく｡
楽しそうに談笑する二人の背中を見送りながら
ニノが淹れてくれたお茶をまた一口啜った｡
今のハナシは間違いなく智君の心の柔らかいトコに触れる話｡
でもニノ自身も不用意に智君を傷つけるような軽率な子じゃないし
他の誰にも口外する事もないだろう｡
・
｢……水の匂いだ｡｣
風が運ぶ外気に、雨の匂いが混じってる｡
外れ気味だった天気予報は、どうやら的中しそうだった｡
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作者名：あさり
作成日時：2014年6月17日 23時
