19.漆黒の羽根を纏いし者/N ページ20
喰い千切られた
真っ赤な鮮血がほとばしる｡
でも、それも一瞬｡
まるで幻影のように目の前の光景は消え失せて
潤君に襲いかかった
｢ダメだ!
やっぱり智は潤君の敵じゃない!!｣
｢お前なんか目じゃねぇよ!!
オラァ、どうしたチビ!!
俺に『お仕置き』するんじゃなかったのか!?｣
潤君の嘲笑が部屋の中に響き渡る中、相葉さんの静かな独白が舞った｡
｢大ちゃんが動きを見切った｡
この勝負、潤君の負けだよ｡｣
｢相葉さん？｣
音もなくふわりと舞い上がる｡
黒い羽根達は自分の主人を守るかのように、トン…と床を蹴った智の体を包み込んだ｡
｢さと…し……｣
………綺麗だと思った｡
・
舞い上がる漆黒の羽根に包まれた智を
神々しいとさえ感じた｡
一切の無駄がない、優美にさえ感じる動きで、
智は舞い上がった羽根を一枚指に挟む｡
ふう…と息を吹きかけると羽根は見る間に姿を変え、漆黒の刀へと変化した｡
ふにゃふにゃ懐っこく笑う特有の笑みとは違う、
冷徹にさえ思える笑みを浮かべ
｢大ちゃん、法術も器用にこなすのにさ｡
ああやって酔狂に刀使って、相手の懐に飛び込んでくのが大好きなんだよね｣
智は空高くから獲物を狙うハヤブサみたいに潤君へと切り込んでいく｡
鋭く尖った爪が、キィ…ンと甲高い音を立て
智の漆黒の刃を受け止めた｡
息が詰まるような緊張感の中で聞こえてくるのは
潤君の爪と競り合う、智の刀の刃擦れの音……｡
｢潤君、力弱いねぇ｡
ひょっとして女の子だったりして(笑)
……お前、その程度で俺に勝つつもり？｣
｢なに!?｣
ニィ…って口元を歪めた智が
競り合っていた爪を弾き飛ばすように刀を振りあげると
その衝撃で潤君の体がゴム毬みたいに吹っ飛んだ｡
｢マジ、で…？
潤君が智の力に競り負けた？｣
細く、しなやかな体から溢れるのは、誰もが逆らえないような畏怖………｡
ぺろりと漆黒の刃を舐めた智が、なんとか体を起こした潤君に
いつもの柔和な笑みを浮かべた｡
｢で？俺がなんだって？
……潤君は何処から切り落とされたい？
三角の耳？
それともそのふさふさの尻尾？｣
にじり寄る智に潤君が後ずさりをする｡
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作者名：あさり
作成日時：2014年6月17日 23時
