15.綺麗な薔薇は棘だらけ｡/N ページ16
すりむいた肘が今更だけどじんじんする｡
智は赤く剥けた肌を一瞥した後
まだガクガク震えるオレを安心させるように涙でぬれた頬を撫でて
もう一度翔さんに鳶色を向けた｡
｢久し振りだねぇ｡
あん時、逃げ遅れた翔君が陰陽師に封じられてから会ってないから…1,000年以上ぶり？｣
｢智君ってばおれのこと見捨てるんだもん｡
あの後、助けに戻ってきてくれるかと思って、お札が貼られた石の下で、50年くらい智君のコト待ってたんだからね？｣
いじいじ上目遣いの翔さんに、智はカラカラ声上げて笑ってる｡
｢だって翔君どんくさいんだもん｡
それにあれくらい、翔君なら一人でなんとかできるじゃん｡
俺と離れてから何があったか知らないけど、翔君ってばいつの間に子供産んだの？｣
あぁ…、頭がぐらぐらする｡
さっきから犬神だの、狐だの｡
1,000年とか、50年とか｡
出てくる時間軸も目の前の光景も
いろんな意味でオレの常識から逸脱したことばっかだ｡
｢あれ？
あのワンコ君、翔ちゃんの子供だったの？
オレ、翔ちゃんもろ好みだから口説こうと思ってたのに｡｣
っつーか、男相手に『いつ子供産んだ？』なんてサラッと聞く智も智だけど
口説くつもりでいたっていう相葉さんもオカシイ｡
｢あ〜、相葉ちゃんそれはやめとけって｡
翔君は
コイツと見込んだ人間を惑わせて、破滅へと導く物の怪だよ｡
翔君の所為で滅んだ国が幾つあるか知ってる？
この人が通ったあとは、ペンペン草も生えないんだから｡｣
智の言葉に、今度は翔さんがカラカラ声上げて笑い出した｡
｢智君、そりゃいくらなんでも言い過ぎだよ｡
ここ200年くらいおれ、子育て中だから大人しいもんだよ？
潤は拾い子なんだ｡
空き地に捨てられてたのをおれが拾って育ててんの｡｣
翔さんは出逢いの『その日』を思い出したのか
何処か夢見心地で身振り手振りを交えて語り始めた｡
16.うちの子が一番カワユイのです｡/N→←14.八咫烏と甘い涙｡/N
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作者名：あさり
作成日時：2014年6月17日 23時
