02.彼は人気の花屋オーナー/N ページ3
｢今日は人に会うって言ってたな、アイツ｡｣
ぱたぱたと階段を下りてくる慌ただしい音｡
古い木造の建物だから、足音が近づいてくるたびに、階段がギィギィ軋みを上げる｡
この、騒がしい足音｡
オレがいう『アイツ』じゃなくて、もう一人のここの住人｡
｢あ、おはよう、ニノちゃん｡
ん〜、なんかいい匂〜い｡
今日の朝ごはんナニ？｣
｢おはよう、相葉さん｡
今日はポトフ作ったんだ｡
店が休みのときくらい、もうちょっと寝てればよかったのに｡｣
｢オレもそう思うんだけどさぁ〜｡
市場とかいかなきゃいけないから、いつも無駄に朝早いじゃん？
この時間になると寝てられないんだよねぇ｡｣
階段の途中からキッチンを覗き込んで
人の良さそうな笑顔を浮かべてるのが、二号室に住んでる相葉雅紀さん｡
すらっと背が高くて痩せててさ｡
ちょっと天然入ってて、あんま頼りになるカンジの人じゃないんだけど
これでも駅前で小さな花屋を営んでる、れっきとしたオーナーなんだ｡
しかもね、優しくて明るくて人当たりがいいから｡
お店の経営状況もまずまずで
相葉さんの花屋さんって、結構、女の子に人気だったりすんだよね｡
｢今日は朝からポトフなんて作ったの？
ニノちゃん高二でしょ？
部活とか勉強とか、学校行く前の時間だって結構忙しいのに、朝から大変だったんじゃない？｣
｢んー、でも、これならお腹に優しいし。
あの人も食べてくれると思って｡
なんかさー、最近また痩せたよね？｣
｢なに？
大ちゃんのこと？
ひょっとして今日の朝食って大ちゃん仕様？｣
相葉さんは袋から食パンを２枚取り出して、トースターにセットしてる｡
駅の中にある、通称『駅マチ』のパン屋さん｡
相葉さんお気に入りの米粉で出来た食パンだ。
｢アイツさぁ、元々食べることに執着がないじゃん？
ちゃんと準備して食べさせてやんないと、すぐにメシ抜いて痩せちゃうからさ｡｣
オレは相葉さんの分のポトフを、白いボウルによそいながら溜息をついた｡
｢あぁ、そうだ!
大ちゃんから聞いてる？
今日、仕事の関係で人に会わなきゃいけないから出かけるって言ってたけど｡｣
｢うん、だから早めに朝食準備してやったのに｡
まだ起きてこないのかなぁ…
オラ!智!!
朝だぞ!!
お前があんまのんびりだとオレが遅刻するじゃねぇか!!!
早く起きて来いよ!!!｣
……ふぁ〜い、今行く〜｡
二階から眠そうな、アイツの声が降ってきた｡
03.僕のあしながおじさん/N→←【Episode1】「にのみや荘へようこそ」01.いつもの朝の光景/N
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1214人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あさり
作成日時：2014年6月17日 23時
