第二十三話:千人斬りのロンド《ジェイシス視点》 ページ27
サングラスをかけた男は、廊下の壁に持たれている。
その特徴的な姿、見間違えるわけがない。
彼が、クロメアを殺した、人物だ。
私は冷徹に、男を見る
「・・・・・・・貴公が、河上万斉であるか」
「ほう・・・拙者の名を知ってるとはな。書架の守り人」
「私をその名で呼ぶでない。その名で呼ぶのは───敵だけだ」
かつん、と足音を立てて、サングラスの男──河上万斉は一歩踏み込んだ。
サングラスから覗く黄金の瞳は、私を見据えていた。
「知れた事を・・・ぬしは暴君と関わっている。その時からでござるよ、拙者達が敵どうしであるのは」
冷たい声に、私はぞくりとした。
河上はどうやら、私と春咲希美の関係を知っているらしい。彼女が
「だが、ぬしが求めてるのはその事では無いであろう?」
かつん、ともう一歩踏み込んでいく。
「───クロメア・サルバドールを殺したのは拙者だ。なに、取るに取らない瑣末だろう?それに・・・・・裏切り者は殺す、そう相場は決まってるでござる」
「───────ふざけるなっっ!!!!!!」
私は抑え込んでいた怒りが、今の一言で爆発する。爛々と輝く炎の珠を河上に放つが、直ぐに斬られた。
「・・・・転調したかのように、リズムが変わり
河上の疾走が始まる。
この狭い空間では、呆気に取られるほどの速さだった。彼が刀を振り上げたと同時に、彼女の───銀の輝きを持つミスリルのハルバートが現れ、彼の刀を受け止める。
ぎぃん。と金属音が静寂を切り裂くように響いた。そして隙を見計らい、河上は私の脇腹を蹴り、壁に叩きつける。
「ぐ・・・・うぅ・・・!!!!」
真っ赤な目には、余裕綽々な憎き敵の姿が。
私は背中の痛みに耐えながら、動こうとする────。
「やはり、か。」
河上は左手を持ち上げる。ひうんひうん───と、唸るような音が聞こえたような気がした。
「彼奴からぬしの事は聞いておる。しかし、これ程とはな。ぬしは友の為なら、誰よりも残酷に成れる────その偽善というのは」
何も握ってない左手に、力を込める。すると、私が再びハルバートを握ろうとした右手首が。
ぶつん、と部品が取れたように右腕から離れた。
手首はくるくると空中を舞う。
「──────」
呆けたような目で自分の手首を見て、先の途絶えた自身の右腕を見る。
そしてどさり、と落ちた瞬間。
痛覚が蘇る。
第二十四話:極限死《ジェイシス視点》→←第二十二話:罪と罰《ジェイシス視点》
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