【企画小説】夢幻の如く【リレー小説】 (ページ1)

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――主神side――

気怠い体に鞭をうち、息を切らせ駆け抜ける。

心配そうな顔の従者に笑顔を向けてやる気力さえない。

……しくじった。

この私ですら予知できぬ出来事だった。

一瞬、本当に一瞬。

気を緩めたその瞬間に祠を破壊されてしまった。

私の力の媒介とも言える、大切な祠が。

｢ダメです、主様！いっこうに減る気配がない…っ！｣

｢妖(やつら)の数はこちらの何十、下手すれば何百倍！
レベル５もいる以上、まともに相手をするのは無謀だ！！｣

｢せめて主様だけでもお助けせねば……っ！｣

従者達の言葉に後ろを振り向く。

ぞろぞろと私達を追ってきているどす黒い“何か”。

地面から手だけを出し捕らえようとしてくるもの。

空から攻撃を仕掛けてくるもの。

巨体を揺さぶりながら咆哮をあげるもの。

彼らの言う通り、数も種類も多すぎる。

まともにやりあって勝てる見通しは――――――ない。

｢っ……私のせいで……！｣

私が未熟なせいで。

祠を守りきれなかったせいで。

この都が、世界が。

妖達の手に堕ちてしまうかもしれない。

行き着いた結論にぎゅっと唇を噛み締めたとき。

一際大きな咆哮と共に襲う地響き。

｢……っ！危ないっ！！｣

咄嗟に従者達の前に飛び出し結界を張る。

――――――刹那。

まるで押し潰されるかのような衝撃。

ビシビシと軋む結界。

｢そんな……っ！まさか、こんなに……！！｣

想像を遥かに越える攻撃。

それを媒介を失った今の私が抑え込めるはずもなく。

どぉん、と大きな爆発が辺りを包み込む。

結界は粉々に砕け、無防備になった今。

私達を守るものは何もない。

爆発で起きた突風に煽られ吹き飛ばされる。

しかも、不幸なことに。

飛ばされた先は世界の狭間に大きく開けられた穴。

世界と世界を無理矢理繋いだ通り道。

｢なっ……主様！！｣

｢これは……っ！うわあぁぁっ！！｣

｢きゃあぁぁあぁぁっ！！｣

爆発に巻き込まれたらしい従者達がちりぢりになって狭間に吸い込まれていく。

勿論、結界を破られ抵抗する力を失った私も呑まれていく。

あぁ、私は主神として世界の均衡を保たねばならないのに。

主神としての使命をまっとうできないなんて。

ましてや大切な祠も、信頼できる従者も守りきれないなんて。

｢主様ーーっ！！！｣

薄れ行く意識の中。

私を呼ぶ必死な声だけがいつまでもこだましていた。