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家に帰ると津美紀が夕飯を作って待っていた。先に食っててもいいのに、律儀に俺の帰りを待って。

「おかえり、恵」

俺は返事なんてしないで津美紀を一瞥しただけ。自分の部屋に戻り制服から私服へと着替える。腹の虫の居所が悪い。津美紀の顔を見るとつい先程別れたばかりのあいつをまた思い出してしまう。頭を1回大きく振って、無理やり思考を変える。自室の扉を開けてリビングへと足を向ける。津美紀は冷えてしまったご飯をレンジで温めていた。

「今日も任務だったんだね。お疲れ様」

大方五条さんから連絡が行ったんだろう。ああ、とだけ返事をして席に着く。温め終わったご飯が俺と津美紀の席の前に置かれる。特に会話という会話もなく、家の中にはテレビの音が響いている。テレビの中では芸能人が街中を歩くという企画をしていた。津美紀は「美味しそう」だの「行ってみたいね」だの一つ一つ反応している。俺はまた返事を返すことは無いけれど、津美紀は慣れたようにまた同じことを繰り返すのだ。


夜が深けて、津美紀も自室に入りとうに眠った頃だろうか。俺は浴室へと赴き、シャワーを浴びる。

頭から熱いお湯をガンガンとかける。湯気が浴室を満たしていた。白く靄がかかったような視界は世界の輪郭をぼやけさせる。それはあの時のAの輪郭をぼかしていた時のようだった。

生と死の狭間。

きっとあの曖昧な輪郭は、呪霊と共感して限りなく呪霊(そっち)に近しい存在に一瞬、Aがなったから。きっとAは自分でも分かっていないんだろう。Aにとっては、呪霊を救ってあの光の粒を見ることがあいつの救いなのだから。たとえそれが自分を犠牲にしているものだとしても。

呪いに飲み込まれる、いつか本当にAがそうなってしまったら。

気がつけば両手を固く握っていた。

上から降り注ぐ水はまだ熱さを纏っている。きゅっ、と栓を締める。髪から滴り落ちる水がパタパタと足元へ落ちていく。

一度大きな舌打ちをして、バスタオルを手に取る。がしがしと乱暴に髪を拭いた。





いつまでもいつまでも、あいつが頭から離れない。

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雛形(プロフ) - hiyoriさん» hiyoriさんコメントありがとうございます!凄いと言っていただけて本当に嬉しいです…!私の場合小説を作る時はテーマを決めて大体のプロットを立ててから書き始めています。1話1話はそれに沿うように勢いで書いて推敲して、というような感じですね! (2022年10月3日 8時) (レス) id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
hiyori - 凄いです😭 どうやって小説は作るんですか? (2022年10月2日 22時) (レス) @page5 id: 3185205e6c (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - アキさん» アキさんコメントありがとうございます!他の小説も読んでいただいた上にさらにコメントまで!本当にありがとうございます!嬉しすぎて転げ回ってしまいます…!不定期更新になりますがこれからも頑張りますね! (2022年9月30日 1時) (レス) @page29 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - 主様の書く小説どれもドストライクすぎます😭💕💕 (2022年9月23日 1時) (レス) id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - 春雪さん» コメントありがとうございます。見直したのですが名前変換できない部分が分からず、念の為更新したのですが現在も変換出来ない様でしたらどの文章の所か教えて頂けますでしょうか…?本当に申し訳ありません‪‪💦‬ (2022年7月24日 23時) (レス) @page9 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雛形 | 作成日時:2022年1月26日 19時

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