二人を結ぶ紫の糸 ページ20
紙燭の灯と部屋に差し込む月明かりに照らされたAは
えもいわれぬような美しさと共に微かな色香までも感じさせる
黒真珠のような潤いを持った瞳を見つめていると
先程Aが言った事が俺の脳裏によぎった
“貴方様と再び逢えるという確信が
歳を重ねる度に持てなくなっていったのです
それが私にとって一番怖いものでした”
その時の哀愁に満ちた愛おしい妻の顔を思い返す度に
まるで針で刺されたかように胸が傷んだ
「宗近様？…どうなさったのですか？」
「…あぁ、すまんな
大丈夫だ、心配には及ばんよ」
じっと自分を見つめ続ける俺を不思議に思ったのか
Aは俺の頬をしなやかな手で包み込んで
心配そうな目を向けてきた
その仕草の愛い事と言ったら
どの言の葉で表せば良いのか分からない程のものだ
「なぁ、Aよ
この明日をも知れぬ世に人としての形を持ち
温かな命を主より賜ったそなたに妻としての覚悟を問おう」
「妻としての覚悟、ですか…ふふっ、懐かしい
私たちの元の主が
ふと遠き平安の頃を思い出して
俺は元主がAの主に尋ねた言葉をそのまま口から紡ぎだした
「そなたはもし俺らを結ぶ紫の糸が綻んで、ほどけてしまったらどうする?」
すると、Aは程よく色づいた唇に弧を描き俺の頬を撫でた
「綻んでほどけてしまった糸は今一度、結びなおせば良いのです
私はその糸が結ばれるまで千代に八千代に待っておりますから」
期待通りの言葉がAの口から紡がれて俺は表情を緩めてしまった
そしてふと目に入ったAの夜着の紐の結びを見て
俺はまた笑みを隠しきれないようになった
「なぁ、Aよ
その総角の結びはそういう意味だと受け取ってもよいのか?」
「っ、はい…今宵はどうぞ貴方様の意のままになさって下さいませ
言の葉を紡げる今、やっとお伝え出来ますが……愛しております、宗近様
貴方様を愛する私の心は平安の頃より変わっておりません」
頬を染めながらそう告げる唯一の愛しい妻
途端に俺の中で何かが切れる音がした
「愛い奴め…そなたのおかげで抑えが効かなくなりそうだ
…あぁ、明日の朝餉には間に合うように起こすから安心しておくれ
俺も愛しているぞ、A」
そう言って俺はAの夜着の紐に手を伸ばした
総角の結びの結び言葉
―この結び目のように
今宵は貴方ときつく抱き合いたい―
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リン(プロフ) - 更新頑張ってください！！ (2022年3月30日 16時) (
レス) @page24 id: 4c69a0ba50 (このIDを非表示/違反報告)
麗扇姫(聖ヶ丘哀)(プロフ) - おタケさん» 数ヶ月前におタケ様のコメントを読ませて頂きました。その時、コメントの優しさに思わず涙が出てしまいました…。温かな言葉を下さって本当にありがとうございました！お待たせしてしまった分、頑張っていきますので今後ともどうぞよろしくお願いします。 (2019年7月1日 14時) (レス) id: 2f2ea1e042 (このIDを非表示/違反報告)
麗扇姫(聖ヶ丘哀)(プロフ) - *☆凛月-Ritsu-☆*さん» 返事が遅くなり申し訳ありません！続きが楽しみと言って頂けて嬉しい限りです。立ち直ったばかりで上手くいかない事も多々あるかもしれませんが、今後ともどうぞよろしくお願いします。 (2019年7月1日 14時) (レス) id: 2f2ea1e042 (このIDを非表示/違反報告)
おタケ(プロフ) - なんとお声がけすれば良いのか、無責任な言葉になってしまいますので、一言だけ。私はずっとお待ちしています、ご家族との時間を優先してあげてください。 (2019年4月14日 12時) (レス) id: 63e16b2caf (このIDを非表示/違反報告)
*☆凛月-Ritsu-☆* - 続き読ませていただきました！*^ ^*とても長谷部とか三日月が可愛いかったです(*´ω｀*)またもや、続きが楽しみです(*´ω｀*)更新頑張ってください！( ´∀｀) (2019年4月11日 20時) (レス) id: 28c28e4b5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：麗扇姫(聖ヶ丘 哀) | 作成日時：2018年3月16日 23時
