二十二話 呼び名 ページ23
(それって、山南さんが刀を持てなくなるんじゃ…)
Aは知っている未来を変えられないことに後悔が募る。
「A君大丈夫ですか?」
「どうした?顔色わりぃぞ」
「あ…あぁ大丈夫だ」
藤堂は俯いたAの顔を覗き込む。Aは顔の近さに驚いたが、少し元気が出た。
ありがとう、とふっと笑う。するとそっかそっか、と藤堂も笑みを返した。千鶴もほっとしているようだ。
「んー、僕もこの子達が食べるの見てるだけじゃ退屈だし、さっ行くよ」
「えっと…」
総司はそう言うと斎藤の膳を一つを自分の手に、もう一つを藤堂に手渡した。
膳を持って先頭を歩く三人に着いていくAと千鶴。襖を開けると永倉と左之が座っている。
沖田と藤堂は膳を二人の間に置いた。
「ありがとうございます、藤堂さん」
「ありがとうございます、沖田」
千鶴の後に続けざまに礼を述べるA。沖田はAに冷ややかな目線を送った。
「あのさあ、A君。仮にも小姓の君が僕に向かって呼び捨てはないんじゃないかな」
「ぐっ…沖田さん」
「そうじゃなくて総司」
「…そ、総司君」
沖田は茹蛸のように真っ赤なAの顔を見ると満足そうに笑った。その顔にそっぽを向くA。左之と永倉は顔を見合わせて笑った。
「じゃあさ、俺の藤堂さんってのもやめにしない?皆、平助ってよぶから、それでいいよ」
「でも…」
「年も近そうだから、その方がしっくりくるし。俺も千鶴、Aって呼ぶから」
「じゃあ、平助君で」
「おう、平助」
「お前ら話なげぇぞ」
遅いことに抗議する新八に謝りながら席につく千鶴。
「すみません。わたしのせいで…」
「ん、あぁ。別に良いんだがよ。お前たちが来るまで食い始めるのを待ってやった、俺様の寛大な腹に感謝しやがれ!」
「…あはははっ!」
新八の言葉に腹を押さえて笑い苦しむA。周りの幹部は若干引いていた。
「そんなに面白かったか…!よーしAに平助の魚をやろう」
「ちょっと、新八っつぁん!何で俺のばっか取るのかなあ!」
「ふはははは!それは体の大きさだぁ!」
「いや、俺もAも対して変わんないじゃんか!」
永倉は滑らかに藤堂の魚をとり、Aの皿に置いた。藤堂も負けじと永倉のおかずを取ろうとするが追いつけない。
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作者名:刹那ハル | 作成日時:2015年1月15日 17時