二十話 刀の返却 ページ21
「お前らの身柄は新撰組で預かる。雪村、お前を女として屯所におくわけにはいかねぇ。だからこのまま男装を続けてもらう」
「はい」
土方は千鶴に命じたがAには触れない。
(やっぱり美声だ…。ええ、うっとりは置いといて。はい、そして当然の如く私の男装は気付かれませんでした。ばれたときとか殺されるかな、なんて…)
「女性の存在は隊内の風紀を乱しかねませんしね」
「じゃあ、私は?」
「お前は何もしなくていい。部屋を一つやるから引きこもってろ。A、お前もだ」
「はーい」
「A、お前の存在は近々隊士たちに打ち明ける。それまでは雪村と共にいろ」
Aは無言で頷くとほっと息を吐いた。
すると土方は千鶴を見据えて、刀を返した。それを嬉しそうに受け取る千鶴。
「私たちではあんなことにならないねぇ」
『マスター、女口調。当たり前だろ。何てったって、俺はハイスペックだからな』
睡の自信に満ち溢れた返答にAは口元を緩ませた。
「Aは刀はねぇのか?」
「君、あの時は持ってたよね」
「あー、ありますよ」
土方と沖田に問い詰められて返事がしどろもどろになるA。土方は疑うような目でAを見た。
「どこにだ」
『まずいな。ごまかしとけ』
「あ、俺らが寝てた部屋です!」
「ふーん」
(とりあえず、やり過ごせたかな…)
そしてAたちは部屋に返された。Aは何とかごまかしきれた紐から刀に戻った睡を握り締めながら。
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作者名:刹那ハル | 作成日時:2015年1月15日 17時