名も無い関係【進撃の巨人】 (ページ4)

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Episode 03 ページ4

「………………」

筆が止まったまま、いったい何分過ぎただろうか。書こうとしては止め、書こうとしては止め。それを何度繰り返しているかわからない。

Aは他の兵士が寝静まったあとの食堂で一人、ペンを持ったままずっと同じ体制で固まっていた。

母に書く内容は決まっている。

お見合いはしない。断ってくれ。

たったそれだけのことなのに、なぜか書く事ができない。理由はA自身、わかっていた。その言葉が母を傷つけるかもしれないからだ。

お見合いなんて一つの口実にしか過ぎない。母の本音は違うところだ。つまりは調査兵団をやめて、戻って来いというのが本音だろう。

「親不孝ものだな……私」

はぁ…っとため息をついて、机に顎をつけた。だらしない格好のまま、何度読み返したかわからない母からの手紙を広げる。

「お見合いかあ……」

「見合い？」

「！！」

いつからそこにいたのだろうか。Aが弾かれたように振り返ると、リヴァイが食堂の扉のところに寄りかかってこちらを凝視していた。

「へ、兵長！いつからそこに！？」

「少し前だ。その手紙、親からか？」

「は、はい。あ、お茶ならお入れしますよ」

「いやいい」

スタスタと横を通り過ぎ、厨房へ消えていく背中を見送る。

ドキドキと胸が鳴って、嫌に息がしにくい。別に彼は恋人ではない。聞かれてまずい言葉でもないのに、妙な罪悪感のような気持ちにAは襲われていた。

「……母が戻って見合いをしろと言っているんです」

「………」

「もともと調査兵団に入るのは反対でしたから。結婚でもして戻ってこさせたいんだと思います」

「………まあ、母親なら当たり前だろうな。誰もこんな死にに行くようなところに娘を置いておきたいわけがない」

「そうですね……」

お茶を入れて戻ってきたリヴァイが目の前に座る。居心地の悪さにAは母の手紙を封筒に収めた。