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Episode 04 ページ5

「で、するのか?見合いは」


「それは……」



すると言えば彼はどんな顔をするのだろうか。
少しでも動揺してくれるだろうか。




「……憲兵団の方みたいです。母の書き方だと相当ないい人みたいで……」

「………」







「母が脚色してるとは思うんですよ。そんないい人なんていないだろうし。それに……えっと……」








「すればいいんじゃねえか。見合い」


「え……」



聞き間違いだろうか。それとも、聞き間違いと思いたいだけだろうか。



「見合いしてここを辞めるのもありだろ。それも女としてのひとつの選択肢だ」

「………」









「お前がどうしようと俺の知ったことじゃねえ」






自分は今、どんな顔をしているのだろう。


ひどく傷ついた顔をしているに違いない。だって、どうしようもないくらい心が痛くて、この場から走って逃げ出したいくらいなのだから。





「……兵長は…兵長には……関係ないことですもんね」



きっと彼と自分の中にあるものは上官と部下でしかない。

それ以上のものなんてないことは分かっている。でも、それでもどこかで期待している自分がいたのも確かだ。



彼が抱く度に、自分を必要としてくれる度にもしかしてなんて思ってた自分が馬鹿で間抜けだ。彼が欲しているのは自分なんじゃない。






自分じゃなくても務まることだと思うと、苦しくてどうしようもなかった。




「なんだ。見合いなんてするなとでも言って欲しかったのか」


「……っ」


「お前、俺に何を求めている。言ったはずだ。俺とお前に体の関係があったとしても――」




「分かってます。兵長と私には特別なものなど何もないということは」



言葉を遮ってまで自分を傷つける言葉を言った。なんの感情もないのなら、期待させるようなことを言わないで欲しい。あんなに優しく抱いたり、あんなに求めないで欲しいと思う。


ひどく突き放してくれた方がまだ優しい。





「分かっているならなんでそんな顔をする。なぜ泣く」


「……泣いてなんていません」



溢れそうになった涙をグイッと袖で乱暴に拭いた。

泣きたくない。傷ついたことを悟られたくない。






「見合いをするのも、ここを辞めるのもお前の自由だ。お前の意思次第だ。俺がとやかく言うことじゃねえ」

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作者名:マキノ | 作成日時:2021年10月26日 17時

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