＊この世で最も美しく、哀しくない話part６＊ (ページ19)

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夜の街に雨が降る。

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はらはらと、雨粒が降る。

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車のライトがぼんやりと光る。

コンビニの明るさがぼんやりと夜の中で浮かびあがる。

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「にーのみやさーん」

遠くで、声がした。

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正面玄関の自動ドアが開く。

「今日も定時帰りですかぁ～」

顔はよく見えない。だけど華奢な小さな女の子が、手を伸ばすのが見えた。

細い指が、和也の肩に触れるのが、見えた。

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･･･････ああやって、チヅルさんも、雅紀に触れたんだろうか。

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過去と今を混同して、今にショックを受けるなんて馬鹿だ。

そう分かっているのに胸が痛い。痛い。

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痛い。

大きく息を吐いた。･････痛い。痛い。痛い。

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だけど。

和「ハイハイ、気安く触らないでね～～～」

和也の、いつものあの、淡々とした声が聞こえて。

「ひっどぉ～い！二宮さん、たまには飲みにでも連れてってくださいよう」

女の子の高い声に

和「ヤダ」

和也の短い返事が聞こえて。

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そうだ。

和也は大学時代からずっと嫌なことは嫌ってハッキリ言って。

それでも誰からも憎まれない不思議な人で。

女の子にモテて。それでも和也はいつも、誰の前でも、変わらなかった。

和也は、和也だった。

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「今度～～、ミナヨ達と飲むんですよ～、そこに顔だけでも出して･･･」

女の子の高い声はまだ続いていて、その声がまるで聞こえていないかのように

和「なにしてんの？」

頭の上で、淡々とした、和也の声がした。

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「･･･え？お知りあい･･･ですかぁ？」

和也の黒いジャケットの後ろで、女の子が怪訝な顔でこっちを見てる。

和也の黒と白のギンガムチェックのシャツが、グレーのマフラーの隙間から少し見えた。

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和「なにかあった？」

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和也が短く聞く。

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私は、何をどう伝えたかったのか、うまく言葉にならず。

だけど和也が私を抱きしめて、

和「････お前ね～･･･会社前で女抱きしめるなんて、こんなトレンディドラマなことやってくれる男、

俺以外いねぇよ？」

そう笑った時に、

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ああ。ただ、和也に会いたかったんだと、思った。