なにこの甘い空気 ページ28
「和、コレAちゃんちに持ってってよ」
「えー」
「えーじゃない。はい持ってく」
「はいはい」
面倒くさいと言いつつも、心ではラッキーなんて。
…俺は重症。
「寒っ」
まだちょっと夜は寒い。
って、俺が薄着だからか。
まぁAんちまでほんとすぐだからいいんだけど。
「あれ、あいつまだ帰ってないの？」
Aんちが見えてきたけど、電気がついてない。
…あいつ、何してんの。
寝てんの？なら襲いに行こうか、なんつって。
「ふふ、何ですかそれ」
周りを見渡した時、Aの楽しそうな声が聞こえてきた。
佐藤さんといんのか？
いや、あの子は反対の道だったはず。
そもそも敬語だし。
「Aんち、ここ？」
「あ、はい。もうあそこ…和、？」
「…どうも」
Aが楽しげに話して帰ってきたのは大野とだった。
なんで大野が家まで送んの。
先生だから？Aが生徒だから？安全のため？
「ニノと家近いの？」
「あ、はい。すぐそこなんです」
「そうなんだ。じゃあ、俺はここで」
「あ、ありがとうございました」
「ん、じゃね。おやすみ」
「おやすみなさい」
…なんだよ、この甘い空気。
二人は先生と生徒を演じてんだろうけど、俺にはわかるよ。
昔からAを見てきたんだ。
あのAの目は恋してる目。
大野を愛おしく見てる目。
あー…結ばれたのか、二人は。
「和、どしたの、？」
「コレ母さんが持ってけって」
「いつもありがとう。おばさんの手料理本当に美味しいから」
「…」
「和、？」
「…大野と出来てんの？」
「…あの、えっと…、」
「…帰るわ」
「あ、あの、和…？実は、私、」
「…聞きたくない！」
なんで俺の気持ちはお前に届かない？
なんでたった一年そこらの野郎に取られんの。
意味わかんないし。
「くそっ！」
むしゃくしゃする。
現実を受け入れられない自分に。
ほんと、くそ！
家の前のゴミ箱を思い切り蹴りあげる。
「ちょっと和あんた何してんの」
「…うるせぇな」
「ちょっと！姉に向かって何て言い方」
「うるさい！」
「Aちゃんと喧嘩した？」
「…今その名前出すな」
「あー…彼氏できた？」
「…死ね！」
ムカつく。腹立つ。
姉に全て見透かされてるところも、なにもかも全部腹立つ。
「俺のものになってよ、」
こんなに好きなんだよ？
なんで伝わんないの。
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作者名：浅井 | 作成日時：2019年3月2日 12時
