先生の気持ち ページ26
「A、ほんとにごめんね…」
「ううん。由美は何も悪くないもん」
「でも私が携帯忘れたから」
「いいの、ほんと。由美は何も悪くないから」
「…うん、」
「ね、なんかケーキ食べに行かない？甘いもの、食べたい」
「私、奢ってあげる！」
「え、いいよ。なんでそうなんの」
「Aが傷つくの、防げたのに防げなかったから」
「だからもういいって、」
「いいから。奢られなさい」
放課後。
由美に昼休みの話をしたものの、奢らせる羽目になってしまって逆に申し訳ない。
「A」
「…先生、」
「大野先生、なんですか？」
「Aに用があるんだけど、いいかな？」
「すぐ終わります？私たち、ケーキ食べに行くんです」
「んー、すぐ終わるかわかんないんだけど」
「えー。どうしよっかなー」
「だめかな？」
「先生、Aのこと傷つけません？」
「え？うん」
「じゃあ、貸してあげてもいいですよ」
「ちょ、貸すって物みたいに」
「貸してあげるかわりに傷つけることは絶対しないでください」
「わかった」
先生はじゃあ行こうかって私の腕を引いて歩き出す。
由美の方を見れば、すごく嬉しそうに私を見ていた。
「先生、どこに」
「いつものとこ」
連れてこられた場所は準備室。
「先生、？」
「とりあえずここ座りなよ」
机の向こう側にソファがあること、知らなかったや。
「よいしょ」
「先生、用ってなんですか？」
「ん？わかったんだよね、俺」
「…何をですか？」
「俺のね、気持ち」
「先生の…気持ち？」
「うん。Aをどう思ってるのか」
「…それって、」
「…」
「…」
少し長い沈黙。
少し小さめのソファに二人で座ってるもんだからちょいちょい肩が当たるの。
当たる右肩が熱い。
「…俺ね、好きみたい」
「え、」
「さっきニノがAのこと優しく撫でてるの見て、それをするのは俺でしょ？Aの隣で笑ってるのは俺でしょ？って思った」
「…」
「どうやら好きで好きでたまらないみたい」
あー………涙が止まらない。
私の気持ちと先生の気持ちが同じになった瞬間。
「好きだよ、A」
「先生…っ」
泣かないでよって先生は私の涙を指で拭う。
…この指も、優しいその声も手も、全て好き。
先生が好きで好きでたまらない。
「キス、しよっか」
「はい」
やっぱり和が言ったことは正しい。
キスは好きな人とするもの。
「もっかい」
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作者名：浅井 | 作成日時：2019年3月2日 12時
