好きになった理由 ページ20
「おはよ、和。もう大丈夫？」
「お陰様で」
「ごめんね？この間は看病してくれてありがと」
「いいえ。あんだけしてやったのに俺の看病はしてくれなかったけど」
「だって移るから来るなって」
「それでも顔ぐらい見せんだろ」
「顔見せたからって、」
「…お前さ、俺の告白忘れたわけ？」
「あ、そうだった」
和に大切な人って言われたんだった。
「ほら、掴まれよ。また落ちそうになるぞ」
「あ、う、うん」
ずっと兄妹みたいだと思ってた。
昔から何かある度に助けてくれて、私のヒーローでもあった。
でも私より背が低くて細かったんだよね、昔は。
でも今じゃ私より背も高くなって、肩幅も広くなったし、見た目よりもがっしりしてんの。
…改めて男の子なんだな、って思い知らされる。
「なぁ、聞いてる？」
「え？なに？」
「だから、俺がいない間なにもなかった？」
「あ、うん。大丈夫大丈夫」
和はずっと私のこと、どういう風に見てたのかな。
妹みたいなとか思ったことないのかな。
「ねぇ、和？」
「なに？」
「私のこといつから好きなの？」
「…お前、それ聞く？」
「いや、なんで私なのかなって」
「なんでって。好きって気持ちに理由なんている？」
「え？」
「好きになったんだから好きなの。それじゃだめ？」
「…だめじゃない」
好きって気持ちに理由なんて確かにいらないかも。
だって私も先生が好きって気持ちにちゃんとした理由はないもん。
声が好きっていうのはキッカケに過ぎない。
「あ、コンビニ寄る」
「うん」
あーあ。
今日も遅刻決定。
「またそれ買うの？」
「うん。この間美味しかったし」
「買ってやろうか？」
「やだよ。またメロンパンとか言われたらやだもん」
「Aにも学習能力あんだな」
「あるし！」
人を犬かなんかだと思ってんじゃないの。
あ、もしかして和の好きってのは実は野良猫とか拾ったときによくある情が移ったとかいうあれ？
んー…
「ほら行くぞ」
「うん」
和とつきあったらこの関係はどうなるんだろ？
変わらないかも。
でもキスとか…その先のこととか…
あ！そういえば！
「ちょっと和」
「なに？」
「あの日、私の鎖骨あたりに痕つけたでしょ」
そう私が言った途端、急ブレーキ。
「バレたか。あれ、Aは俺のって印」
「和のじゃないもん」
「今は、ね」
「今はって、」
鼻歌なんて歌っちゃって。
…私の気も知らないで。
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作者名：浅井 | 作成日時：2019年3月2日 12時
